どうして起こるのか?9割以上が体験する介護福祉士に向けられる暴力と暴言の実態

介護現場で仕事をしている人ならば、「暴力」「暴言」といった理不尽な場面に接することもあるのではないでしょうか。

なかには、「自分が至らない介護士だから、こうなるのだ」と思ってしまう人もいるかもしれません。しかしそれは間違いです。あなたと同じように苦しんでいる人の実態と、そこから見えてくる解決策を考えていきましょう。

「家族を亡くしたこと」を責められて辞職に……

実際にあった例をひとつご紹介しましょう。今から数年ほど前に、一人の介護福祉士(以下、Aさん)が職場を辞し、転職しました。Aさんの態度や力量に問題があったわけではなく、職場環境が悪かったわけでもありません。しかし、Aさんは介護福祉士として仕事を続けていくことができなくなってしまったのです。

その年の5月、Aさんは自分の家族を唐突に亡くしました。家族の亡くなり方はとてもショッキングなもので、ニュースにもなりました。そして、葬儀をして家族を見送った後、職場に復帰をしたAさんを待ち受けていたのは心ない言葉でした。

以前と同様の心配りをし、しっかりと介護を行っているAさんに対して、「自分の家族も守れない介護福祉士に、私たちの大切な親を任せられるか! 私たちの親だって、守り切れずに殺してしまうかもしれない!」という言葉を投げつける利用者の家族が少なくなかったのです。

家族を亡くしたばかりのAさんにとって、この言葉はあまりにもひどいものでした。家族の死に直接Aさんが関わっていたわけではありません。また、家族の死は避けられるものでもありませんでした。しかし、ニュースを聞いた利用者の家族からこのような言葉をたびたび投げかけられたAさんは、「はじめは上司もかばってくれていたんだけれど、毎回言われるし。ほかのご家族からも『あの人、何かやったの?』と言われて施設の信用に関わるからと辞めるように促されて……。納得はいかないけれど、家族の気持ちも上司の気持ちもわかるから辞める」と、介護の職場を辞しました。

介護福祉士であるがゆえに、このように「家族の死」まで責められてしまうことがあるのが現実です。

暴言を受ける人が全体の9割以上という実態

Aさんの例は、いささか特殊だと思われたかもしれません。しかし、利用者の家族からではなく、利用者自身から暴言や暴力を受けたという介護福祉士は決して少なくないのです。

株式会社ウェルクスがとった統計によれば、「利用者から、暴言や暴力を受けたことがある」と答えた人は全体の98%に上っているのが実態です。また、暴言や暴力の内容には悪口や殴打、かみつきだけではなく、セクハラ被害も含まれます。

認知症を患ったことが原因で暴言や暴力にいたる人もいれば、加齢とともに感情が先鋭化することでこれらの行動に出る人もいます。

このように、介護現場はどこでも暴言や暴力と常に隣りあっているといえるでしょう。

介護福祉士に向けられる暴言の対策

「暴力や暴言」を受けたとき、多くの人は上司や同僚にきちんと相談しています。「相談ができなかった」という人は全体の13%程度であり、職場内で問題を共有することには支障はないといえるでしょう。

ただし、相談をしたからといって状況が改善するわけではないようです。「問題は解決できなかった」としている人は全体の84%を超えていることから、「相談すること」が単純に「解決」に繋がるわけではないことがわかります。

もちろん、「相談することで楽になれた」と回答している人は全体の半分近くに上っていますので、声に出して悩みを相談することに決して意味がないわけではありません。

解決策としては、今のところ、以下のようなアイデアが挙げられています。

  • 認知症が原因の暴力・暴言の場合には、そのケア方法を学び、職場で共有。
  • その利用者に積極的に話しかけることで改善。
  • その利用者のバックボーンを探り、対策を見出す。

現場ができること

認知症などの病気を由来とする場合、どのように接しても、暴言や暴力が止まないことはありえます。しかし、それでも職場で話し合い、対策を考えていくことは非常に大切だといえるでしょう。

どれだけ優秀な介護士であっても、暴力や暴言にさらされることはあります。また、一生懸命やっていても理不尽な言葉を投げかけられることはあります。「自分が至らないから、こういうことになるのだ」と落ち込むのではなく、まずは声に出して悩みを相談してみましょう。それによって、問題を職場全体で共有し、対策を見出すことができるでしょう。


参考:

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