介護の現場から「看取り」について考える

多くの介護スタッフが現場で遭遇する利用者の方々とのつらいお別れ。それは突然のこともありますが、ある日利用者の体調が悪化して病院に搬送され、そのまま施設やご自宅に戻って来られない、ということも少なくないようです。2016年の厚生労働省の人口動態統計によれば、病院など看取られる方は約8割に対して、介護施設や医療施設で人生を全うされる方は約1割、自宅での看取りは約1割でした。

それでは今後、高齢者の方々はどのように「死」に対峙していくことになるのでしょうか? 「看取り」の現状と問題について、そして介護する側の現場からはどのようなことができるのかについてまとめました。

どこで「看取り」が行われるか?

看取りとは、今日では人生で最期のときの介護を指すことが多く、ターミナルケアや緩和ケアと密接な関係があります。

自宅において要介護の高齢者の容態が急変すると、ご家族などはパニックにおちいられてしまう場合があります。急変とまではいかない場合でも、具合がおかしいと気づいて駆けつけたかかりつけの医師やケアマネージャー、訪問介護ヘルパーなどが、リスク管理の観点からも救急搬送を要請してしまい、結果的に医療施設でお亡くなりになるというケースは実際のところ多いようです。

「自宅看取り」をしようとされているお宅では、まず本人の意思とご家族の希望を確認しターミナルケアが必要な終末期であることを医師が診断する必要があります。そして、家族だけでなく在宅医療医師、訪問看護士、ケアマネージャーなどの介護者としっかりと情報を共有して連携して看取りの環境に備える必要があります。

ただし、ご家族の死を受け入れる「心の準備」にも配慮が必要です。「自宅で看取る」ということはご家族にとって決して簡単ではないことを認識しておきましょう。

介護施設での看取りの現状

これまでは、特別養護老人ホームなどの介護施設で利用者の体調が急変するとすぐに病院への入院措置となり、そのまま病院で最期を迎えてしまうということが一般的でしたが、昨今は、積極的に「看取り」に取り組もうと考える施設も増えているようです。とはいえ、深夜、施設において介護スタッフが利用者の急変を発見した際に、駆けつけて看取りまで行ってくれる非常勤の医師や看護師のサポートなどの体制が整っており、手順がしっかりとマニュアル化されている施設はまだ多いとはいえません。このような状況のなか、「最後までしっかりと個室居住で看取りまで行います」という介護スタイルをセールスポイントにする施設が現れています。

事業所経営面では、2009年の介護報酬改定で介護施設等において「ターミナルケア」といった看取りにともなう「加算」が新たに設定されたことから、施設に入所している利用者を看取ることで事業面でもバックアップが得られるようになり、「介護施設での看取り」を後押ししているようです。

介護施設でのより良い看取りのために

病院に入院をすれば最新の医療技術で延命できる確率は高くなります。しかし、それは利用者が求めているやすらかな最期ではないことがあります。医療機関のほうが安心という方もいる一方で、介護施設で看取られたいという方もいるはずです。今後、後期高齢者の急増にともない、入居した施設でやすらかな最期を迎えたいという利用者の、自らの最後の尊厳を守るために、「施設での看取り」がしっかりできるようになることが介護施設にいっそう求められるようになるでしょう。

また、看取りの向こう側には身内や家族の存在もあります。利用者のやすらかな最期をしっかりとお手伝いすることはもちろん、残された方々へのケアも大切な仕事であるということを、介護の仕事に携わる者は知っておく必要があるでしょう。

 

参考:

関連記事

  個人情報保護方針はこちらをご確認ください