もしも使用済み紙オムツを水洗トイレに流せたら……?

国土交通省は2018年1月に「下水道への紙オムツ受入実現に向けた検討会」を立ち上げました。介護において、排せつ介助は特に大切なケアのひとつであり、紙オムツはなくてはならないアイテムです。介護が必要な高齢者の増加にともない大人用紙オムツの出荷額は年々増加し、いまや子ども用を上回っています。その結果、使用済みの介護用紙オムツの処理の問題が深刻化しています。さらに、ごみ出しや外出先からの持ち帰りなどの廃棄作業や、その作業にまつわる衛生管理、匂いの問題は、介護する家族や介護施設のスタッフに大きな負担を強いています。そこで今回は、紙オムツを下水道に直接流して処理するという、国土交通省の画期的な取り組みをご紹介します。 

深刻な使用済み紙オムツの廃棄問題

使用済み紙オムツの排出量は年間約250万トン、重量比で家庭系の焼却ごみの6~7%を占めると推計され、今後ますます増加すると考えられています。使用済み紙オムツの含水率や低位発熱量(湿基準)は生ごみと同じレベルといわれています。つまり、水分が多く発熱量が小さいために、ごみ焼却の効率を下げる要因となっているのだそうです。

また、大人用紙オムツは使用前の重さは50g程度ですが、排せつ物を吸うと約210g(約4.2倍)にもなります。パッドを併用するケースが多いこともあり、質量の大きな「重いごみ」として、ごみ出し作業をする家族や介護スタッフの大きな負担になっています。

当然のことながら、介護施設などの使用済み紙オムツは事業ごみとなり、廃棄にはコストがかかります。例えば、東京23区の場合は1kgあたり40円の処理手数料がかかり、この費用も施設の大きな出費計上になっています。

使用済み紙オムツを下水に流すという発想はなぜ生まれたのか?

今後の老老介護、介護離職、介護人材不足などの問題と、75歳以上の約1/3が要介護者(要支援者)(厚生労働省「平成27年度 介護保険事業状況報告(年報)」)となっている現状が重なり、使用済み紙オムツの処理問題はますます深刻化してきています。

そのような状況のもと、打開策として検討が始まったのが「トイレでの排せつ介助時にそのまま紙オムツを流せたら」という発想です。ごみの処理日まで運搬・保管するという衛生上の問題がある現状を、根本から打破するこの画期的なアイデアが実現すれば、ごみ出し労力の負担軽減、汚物保管スペースの削減、ごみ処理手数料の削減などさまざまな問題をクリアできます。

どうすれば使用済み紙オムツをトイレで流せるのか?

使用済みの紙オムツを下水道に流すという処理法を実現するには、いくつかの解決すべきポイントがあるようです。

紙オムツの素材は、紙パルプ、プラスチック、高吸水性ポリマーなどに分類されますが、これらの素材を下水に流すためには、最終的にどのように処理するかが重要です。特に、尿などの大量の水分を吸収すると、それらを包み込んで逆戻りさせない組織構成を持つ高吸水性ポリマーや、防水シート部分のポリエチレンなどの素材は細かく分解する必要があります。紙オムツメーカーには、下水道受け入れの観点からの素材改良を求める必要があるでしょう。

国土交通省は紙オムツの下水道直接処理に向けて3種類の処理方式を提示し、それぞれの課題とその対応方針をまとめ、2018年度からの5 年間で実現に向けて動き出すロードマップを発表しました。

現実的な予想図としては、コンパクトに設置できる民生用の紙オムツ分解装置をトイレ内に設置。その装置に使用済み紙オムツを投入し、専用に施敷された宅内配管システムなどを経て下水道に流し、最終的には終末処理場で固形燃料や肥料などにリサイクルされるイメージが構築されています。

紙オムツの下水道処理は、実現に向けてカウントダウンがいよいよ始まったといえるかもしれません。進展を期待しましょう。

 

参考:

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