その申し送り、本当に正しい?介護士同士の申し送りの落とし穴とは

変則勤務である介護士に申し送りは必要不可欠。しかし、その申し送り、本当に正確ですか? 実は、介護士同士の申し送りには、介護士ならではの落とし穴があるのです。今回は、申し送りの落とし穴についてお伝えしていきます。

伝言のもつ「情報が変化する」可能性

幼少期に伝言ゲームをしたことはあるでしょうか。参加人数が増えると、どうしても伝達内容が変わっていきがちであり、最後の人のところでは全く異なった内容になっていることもありましたよね。

人数が増えるとなぜ、伝言ゲームの情報が変化してしまうのでしょうか。これは、発信者に理由があります。発信者は、情報を受け取って記憶に残す際に、自分の感情やエピソードなどの何かしらの肉付けをして内容を理解します。また、伝言内容が理解できずに言葉のまま覚えようとすることもあります。このような状態で次の人に伝言をすると、自分の主観や解釈に従ったまま相手に伝えることになります。そして、次に受け取った人は、理解できない部分を省略したり、発信者の感情と自分の感情が違えば、変えて伝えてしまいます。こういったプロセスをたどることから、人数が増えれば増えるほど、情報が変化してしまうのです。

問題がある申し送りとは?

申し送りは、言うなれば、伝言ゲームのようなものです。ただし、伝言ゲームと違い、情報が変化することは、ときに利用者の生活や生命に影響を及ぼすことを意味します。

それでは、どのような申し送りに問題があるのでしょうか?

学生を対象とした実験から考える

国際交流基金関西国際センターで、申し送りに関する実験が行われました。介護福祉士候補である学生が現場で介護職同士の口頭での申し送りを聞いてどの程度理解できたかどうかを調べたものです。その際の個人インタビューでは以下のような声が聞かれました。

  • 話の内容は聞き取れたが、利用者の状況がわからず、後で他の人に解説してもらって理解できた
  • 医療用語が聞き取れない。略されるとわからない
  • 申し送り者が早口だから聞き取れない
  • 普段の生活内容の申し送りは察しがつくが、事故報告など突発的なものが聞き取れない
  • あまり聞き取れていないが、忙しそうなので、確認しづらい

発信者が、受信者が正確に受け取れるような配慮や思いやりがなく、独りよがりな申し送りをすると、受信者はその申し送りを正確に受け取ることができないということがわかります。理解不十分のまま次の勤務者に申し送りをしてしまうと、情報の変化がおこるのです。特に医療用語は難しいため、介護士同士の申し送りでは、理解度によっては全く別の捉えられ方で申し送られてしまうことがおこるので、要注意です。

申し送りは言葉だけでなく視覚でも

では、どうしたらよいのでしょうか? 言葉だけの申し送りでは情報が変化してしまうことがありますが、視覚で申し送りを補うと、情報を正確に伝える上で効果があるとされています。その一例を見てみましょう。

介護日誌を活用しよう!

その日1日の情報がまとめてある介護日誌。これを積極的に申し送りに使いましょう。介護日誌にはすべての情報が詰まっているため、もし聞き逃してしまったとしても、この日誌を見れば情報が載っています。また、医療用語など聞き取るのが難しいものも、日誌に書かれている文を目で見ることで内容を理解することや、用語を調べることもできます。介護日誌を活用すると、聴覚のみならず、視覚でも情報を得ることができるため、申し送りの落とし穴にはまることを防ぐ効果があるのです。

介護日誌を書くことは手間もかかり、伝えたいことをまとめるのにはそれなりに文章力も必要となるため大変かもしれません。ですが、文書化することで自分の考えをまとめることができ、本当に伝えたいことは何かを再確認することにも繋がります。介護日誌を記す際には、伝えたいことがしっかり伝わるように、ルール(5W1Hなど)を明確化するとよいでしょう。読み手にわかりやすくなり、読み落としを防ぐことができるようになるので、伝言ゲームの罠を避けることができるでしょう。

また、実際の介護現場では申し送りを日誌に書き残しても見てくれないということもあるようです。

介護日誌を活用してもらうためには、日誌に正確な情報を書き起こして伝えるだけではなく、相手が知りたいことをいかにまとめて伝えるかという配慮も必要となってくるでしょう。

介護の業務改善事例については、こちらでも紹介しています。
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まとめ

申し送りは、発信者がいかに受信者に配慮できるかによって決まってきます。しかし、限られた時間の中で1勤務分の情報を正確に伝えるのは難しいことです。介護日誌を活用するなどして、視覚を活用しつつ、主観を省いた正確な申し送りを今日から意識してみましょう。


参考:

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