2021年度介護報酬改定の目玉、ケアマネジャーの処遇改善

あらゆる介護現場で利用者と介護事業者をつなぐ介護サービスの司令塔、ケアマネジャー。正式名称は「介護支援専門員」といい、ケアマネジャーの略称でケアマネとも呼ばれます。ケアマネジャーは、居宅介護や施設介護などにおいて最初に利用者やその家族からの依頼相談に応じ、介護計画(ケアプラン)を立案作成します。要介護者のさまざまな状況に応じて、オーダーメイドの介護を組み立てる大切な職種です。また、介護保険適用の介護サービスを受けるために必要な、要介護認定の申請における調査もケアマネジャーの業務です。ケアマネジャーは、高齢化社会に突入した日本で、介護の質を保持するカギを握っています。今回は、2021年度介護報酬改定で注目される、ケアマネジャーにかかわる最新情報をお知らせします。

2021年度介護報酬改定で注目、ケアマネジャーの処遇改善は?

ケアマネジャーの日常業務は激務です。平均20~30名の利用者を担当し、毎月のケアプランの作成や利用者との面談のための訪問業務、連絡手配業務など多岐にわたります。残業量は平均1日3時間ともいわれています。

厚生労働省の調査によると、ケアマネジャーの平均基本給は21万7,690円(2018年9月調べ)。後期高齢者の増加により利用者の需要が増え、年々業務が肥大化しているにもかかわらず、介護職員と他業種との給与格差が生まれており、報酬が見合っていないという意識を持つケアマネジャーが増加してきています。

これまで、介護従事者のキャリアマップの最終目標としてケアマネジャーになろうとする人が大勢いました。しかし近年、ケアマネジャーへのなり手が急減しているのです。

ケアマネジャーが不足すると、介護システムの崩壊につながる懸念があります。それなのに、2020年9月に開催された社会保障審議会(介護給付費分科会)では、ケアマネジャーの処遇改善についての加算案は具体化されませんでした。

ケアマネ志願者数がたった1年で6割超も激減。なぜ人気が落ちたか?

ケアマネジャー志願者の減少は数値で明確に現れています。2017年のケアマネジャー試験の受験者数は131,560人でしたが、2018年には49,332人といきなり6割以上も減少したのです。2020年10月の受験者数は46,456人で減少傾向は続いています。2017年から2018年にかけて受験者が激減した理由は、以下のように推測されています。

  •  受験資格の厳格化

2018年に受験資格が大きく変わりました。2017年までは、ホームヘルパー2級や初任者研修修了者は、現場の実務経験5年以上、無資格者でも実務経験10年以上で受験資格がありましたが、2018年からは受験資格対象から除外されたのです。「社会福祉士や介護福祉士などの法定資格を取得後5年以上の実務経験または、一定の相談援助業務に5年以上従事」と厳格化されたため、受験可能該当者が大幅に減少しました。

  • ケアマネジャーの処遇改善が進まない

2020年9月16日まで約7年8ヶ月続いた安倍政権のもとで、介護福祉士の処遇改善は社会問題としてたびたび取り上げられ、改善も行われました。しかし、ケアマネジャーに関しては具体的な処遇改善施策がなく、ほかの介護職との給与格差が狭まっており、資格取得への魅力が薄れていると考えられます。

行政によるケアマネジャーの処遇改善に期待

ケアマネジャーの情熱や取り組み方次第で、利用者一人ひとりの介護サービスの質は大きく変わります。

ケアマネジャーから介護サービスの依頼を受ける訪問介護や通所介護、福祉用具などの介護事業者は、仕事を受注するという立場にあるために、介護計画に対して不満があっても口にできないのが現状です。高齢で要介護者の利用者が、ケアマネジャーにサービスの改善や変更を求めることもできないでしょう。

ケアマネジャーが高い社会福祉の理念と質の高いサービスを提供する良心を保ち、職務をしっかりと実行していくためには、業務量に見合う報酬水準を守ることも重要です。行政によるケアマネジャーの処遇改善が求められるでしょう。

2021年度介護報酬改定のなかで、ケアマネジャーの処遇改善が行われることが期待されています。高齢化社会への流れに逆行した資格取得の厳格化を改正して、個性あふれる福祉への情熱、発想力、行動力を持ったケアマネ人材の育成が促進されることが望ましいです。


参考:

 

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