新型コロナとインフルエンザの同時流行?介護施設における感染症対策

新型コロナとインフルエンザの同時流行?介護施設における感染症対策

新型コロナウイルス感染症の第3波がピークを迎えている現在は、本格的な冬の到来とともにインフルエンザ流行の時期でもあります。手洗い、うがい、マスク装着の徹底した励行により、幸いにして今シーズンはインフルエンザの顕著な流行はまだ見られてはいません。しかし、もし本格的な流行が起これば、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の症状は酷似しており、医療の現場に大きな混乱や危機的状況をもたらす可能性があります。今回は、そのようなふたつの感染症の同時流行、ツインデミックパニックを回避するために実行したい、介護施設における同時流行感染症予防対策をまとめました。 

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の違いとは?

どちらも呼吸器系ウイルスによる感染症であり、初期症状は酷似しています。共通する症状が多く、医師以外には見分けることはまず困難と考えることが大切です。下記のような症状観察はあくまでも参考程度にして、疑わしい症状が見られたら、すぐに医療機関の診察や検査を受けることが大前提です。介護スタッフ一人ひとりが認識しておく必要があるでしょう。

  • インフルエンザ

インフルエンザのおもな症状としては、発熱(38℃以上)や頭痛、筋肉痛、関節痛、せきやのどの炎症があります。潜伏期間は短く感染から発症まで約1~2日、特効薬の開発により致死率は0.1%以下といわれています。

2020年12月18日付の厚生労働省の発表では、12月7~13日のインフルエンザ発生報告数は全国で57名でした。前年同週の発生数77,425名と対比すると、圧倒的に減少しています。

  • 新型コロナウイルス感染症

37℃台の発熱、それ以外の症状は倦怠感や頭痛、のどの痛みなどでインフルエンザと酷似していますが、加えて味覚や嗅覚の障害なども起こるとされています。潜伏期間は最長で2週間といわれており、陽性でも無症状の患者が多いのが特徴です。無自覚、無症状のままでの高齢者への感染が危険視されています。

2020年12月20日時点での感染者数は全国で195,880名、死亡者数は2,873名です。2021年春以降とされるワクチンの接種開始までは予断を許さない状況が続きそうです。

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症共通の基本予防対策とは?

介護施設において、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の両方を予防するには、どのような基本的対策が必要なのでしょうか? 

まず、ウイルス感染には飛沫(ひまつ)感染と接触感染があることを認識しましょう。

飛沫感染とは、せきやくしゃみなどででる、唾液の分泌物に交じっているウイルスが空中に飛ばされて感染を引き起こすもので、感染者から半径1メートル以内は危険範囲と考えられています。また、諸説、諸条件がありますが、飛び散ったウイルスは数時間は生きているといわれています。

接触感染は、文字どおり手や口などがウイルスに触れることによって感染するものです。タオルや食器、テーブル、ドアノブ、便器など、生活空間のあらゆるものを介して感染する危険性があります。

どちらの感染経路も、室内の換気や消毒、マスクの装着や手洗い、手指や物品のアルコール消毒などの対策が効果的であることはいうまでもありません。

介護施設においては、スタッフ全員が作業の合間に利用者の身のまわりの消毒作業を行い、頻繁な手指消毒の反復を徹底しましょう。食事時以外のマスクの常時着用を促すことも、とても大切です。

介護施設での具体的な感染症予防対策とは?

前述した基本予防対策に加え、以下のような具体的な対策で、施設内での感染源、感染経路、宿主を徹底排除するという、一歩踏み込んだ感染症予防策を実践したいものです。

  • 介護スタッフの手袋やエプロンの着用、手指消毒、うがいなどの徹底

介護スタッフは施設外や地域外から通勤するため、ウイルスを運ぶ役割を果たすリスクが高いと考えられます。施設では利用者を対象にした感染予防に並行して、スタッフの感染対策をはかることも重要です。そのような観点から、出勤時、外出先から帰所時の徹底した手指消毒、うがい、衣服の消毒作業、手袋、エプロンなどの消毒や頻繁な交換を念入りに推奨するべきです。

  • 施設内の乾燥を防ぎ湿度を50~60%に維持し、床清掃を徹底

ほとんどの介護施設は冬場、エアコンでの暖房を行っていますが、問題は乾燥です。施設内の空気の乾燥によってウイルスの飛散が拡大します。そこで、加湿器を導入して湿度を高めにコントロールする配慮が必要です。また、飛散したウイルスはいずれ、床や家具の表面などに着地します。したがって、ウエットモップといったものを使用した床の頻繁な清掃を行うことが効果的といえるでしょう。

  • 介護スタッフの行動自粛

介護スタッフには若い世代が多く、休日に友人と外食したり、趣味やイベントに参加したりすることで、不特定多数の人と接する機会が増えることが考えられます。介護スタッフには、ウイルスを施設内に運ぶ役割を果たす可能性があることを認識してもらい、良識ある行動を促しましょう。

介護施設における新型コロナとインフルエンザの同時流行時の感染症対策のまとめと、もしもの際の対処法は?

高齢で基礎疾患のある人が多い入居者、利用者を守るためには、「3密」を避け、外部からの感染経路を完全遮断し、感染を拡大する環境の排除に努めることが重要です。手洗い、うがい、身のまわりの消毒の徹底を励行することを日々意識しましょう。

もし利用者に異変があった場合には、迅速に施設内の連絡をはかり、時系列で経緯をまとめておき、情報を共有します。けっして素人判断はせず、すぐに提携の医者や看護師に連絡をすることが、なによりも大切です。

また、ほかの利用者や介護スタッフとの濃厚接触を回避するための、罹患者用の隔離スペースを施設内に準備しておくとよいでしょう。利用者にウイルス感染の疑いのある体調不良が見られた場合には、診断前に隔離スペースに移動してもらえれば、万が一の場合に安心です。

さらに、これからの冬期はノロウイルスの感染も激増してくる時期なので、あわせて対策を考えておきたいものです。 


参考:

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