2021年度介護報酬改訂における「自立支援」の概要について解説

2021年度介護報酬改訂は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、感染症や災害への強化をはかる内容が含まれているのが特徴です。また、改訂の柱のひとつに「自立支援・重度化防止」が挙げられています。今回は、2021年度介護報酬改訂の自立支援促進に関する主な加算について詳しく解説します。

2021年度介護報酬改訂の基本的な概要

2021年度介護報酬改訂は、介護保険制度の見直しを視野に入れ、医療・介護連携の推進などの内容が盛り込まれています。基本的な概要としては以下の5つが掲げられ、今後の介護サービスのあり方にも大きく影響を与える改訂となっています。

  • 感染症や災害への対応力強化
  • 地域包括ケアシステムの推進
  • 自立支援・重症化防止の取り組みの推進
  • 介護人材の確保・介護現場の革新
  • 制度の安定性・持続可能性の確保

なかでも、高齢者の自立支援・重症度防止については、2018年度の介護報酬改訂においても加算が新設されており、今後の重点課題として位置付けられています。

自立支援・重症度防止の基本的な考え方

今後は、高齢者の尊厳を保持しつつ、自立支援・重症化防止を推進して、廃用症候群や寝たきりを予防していくことが求められています。そのためには、次の2点が重要とされています。

  • 質の高い評価やデータ活用を行いながら、科学的に効果が裏付けされたサービスの提供
  • リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取り組みの連携強化

今回の改訂で追加される主な加算について以下に紹介しましょう。

自立支援促進加算

対象は介護療養型医療施設を除く、特別養護老人ホーム(特養)、地域密着型特別養護老人ホーム(地密特養)、介護老人保健施設、介護医療院で、入所者1人につき、1月あたり300単位算定可能です。主な算定要件は以下のとおりです。

  • 医師が入所者ごとに、自立支援に必要な医学的評価を入所時に行い、6ヶ月に1回以上の頻度で見直し、自立支援にかかる支援計画の策定などに参加する。
  • 医学的評価の結果、特に自立支援のための対応が必要であるとされた者ごとに、医者および多職種が
    共同して、自立支援にかかる支援計画を策定し、支援計画にしたがったケアを実施する。
  • 医学的評価にもとづき、3ヶ月に1回以上、入所者ごとに支援計画を見直しする。
  • 医学的評価の結果を厚生労働省に提出し、フィードバックを受けた内容をもとに適切なサービスを提供する。

廃用症候群や寝たきりを予防すべく日中の離床や活動を促し、生きがい支援につなげていくことが評価される加算となっているのが特徴です。

科学的介護推進体制加算

自立支援・重症化防止促進の効果を最大化するために、科学的に裏付けされた介護の実現が掲げられており、「CHASE」の活用が推奨されています。前述の自立支援促進加算においても、厚生労働省に提出するデータはCHASEの使用が推進されています。

*:CHASEとは、利用者の一人ひとりのサービス内容、状態などの情報が蓄積されたデータベースのことをいいます。心身状態の変化・改善の関係性についての情報を集め、サービスの質、効果についてのエビデンス(科学的裏付け)を蓄積することを目的としています。

CHASEを活用した事業所に対して、新たに算定が可能となるのが科学的介護推進体制です。対象は通所系サービス・施設系サービス・居住系サービス(介護療養型医療施設を除く)・多機能系で、算定額はサービスごとに異なります。

  • 通所系・多機能系・居住系サービス:

1ヶ月あたり40単位

  • 施設系サービス:

加算I:1ヶ月あたり40単位

加算II:1ヶ月あたり60単位(服薬状況の提供を求めない特養、地密特養については50単位)

算定要件は以下のとおりです。

  • 入所者・利用者ごとの心身の状況等(加算IIは心身および疾病の状況等)の基本的な情報を厚生労働省に提出していること。
  • サービスの提供にあたり、必要に応じて厚生労働省に提供した内容から得られたフィードバックを活用していること。

すべての利用者についてCHASEにデータを提出し、データベースからのフィードバックにもとづき、事業所の特性やケアのあり方などを検証します。検証結果をもとに、ケアプランやサービス内容を見直し、事業所単位でのPDCAサイクル(Plan[計画]、DO[実行]、Check[評価]、ACTION[改善])の質を向上することが評価されます。

なお、CHASEは2021年度の改訂から「LIFE」に名称を変え、リハビリテーションの情報に特化したデータベース「VISIT」と統合される流れとなっています。

口腔・栄養スクリーニング加算

通所系サービス、居住系サービス、多機能系サービスでは、これまでの「栄養スクリーニング加算」を改定して、「口腔・栄養スクリーニング加算」が新設されます。

その背景には、高齢者の口腔機能や栄養状態を維持していくことは、自立支援、重症化予防に大きく影響をおよぼすということが挙げられます。

口腔・栄養スクリーニング加算はIとIIに区分され、Iは20単位、IIは5単位算定可能です。算定要件は以下のとおりです。(加算Iは①および②の2項目に、加算IIは①または②に適合すること)

①介護職員が、サービス開始時および6ヶ月ごとに利用者の口腔状態について確認を行い、その健康状態に関する情報を介護支援専門員に提供していること。

②介護職員が、サービス開始時および6ヶ月ごとに利用者の栄養状態について確認を行い、その栄養状態に関する情報を介護支援専門員に提供していること。

自立支援促進には、科学的なデータによる多職種連携がポイント

今回の改訂からは、科学的に裏付けされたデータをもとに、多職種が連携して質の高いサービスを提供していくことが、自立支援のポイントであることが見てとれます。今後、高齢化社会を迎えるにあたり、健康寿命をいかに伸ばして、高齢者の尊厳を保障できるかが課題に挙げられます。そのために、高齢者の自立支援を促進していくことは介護事業者にとって重要な任務のひとつといえるでしょう。


参考:令和3年度介護報酬改定の主な事項について|厚生労働省

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