地域での暮らしを支える新制度「介護予防・日常生活支援総合事業」とは

「介護予防・日常生活支援総合事業」は2015年度の介護保険制度改正により始まった新しい事業です。全自治体に完全移行して1年が経ち、地域ごとに特色のあるさまざまなサービスが誕生しています。今回は「介護予防・日常生活支援総合事業」について解説します。

地域ごとの多様なサービスを創出する「介護予防・日常生活支援総合事業」

「介護予防・日常生活支援総合事業」とは、地域支援事業の1つで総合事業とも呼ばれます。2015年度に介護保険法が改定されて以来、各市町村は段階的に総合事業への移行を進め、2017年3月までにすべての自治体で完全施行となりました。これまでの介護予防サービス事業と総合事業との違いは以下の通りです。

  • 運営主体が国から地方自治体へ移行
  • 地域の実情に合わせたサービス提供
  • 介護事業所以外にNPOやボランティア団体、地域住民などの参画
  • 要支援認定者以外にも何らかの支援が必要な65歳以上の人すべてが対象
  • リハビリテーション専門職などが関与可能

運営主体が各自治体へ移行したことにより、基準単価もそれまでの全国一律から自治体独自で設定することが可能となりました。このことにより、地域の特色を生かしたサービスが創出され、実情に合わせたサービスの提供が始まっています。

また、サービスを提供する側もこれまでの介護事業所だけでなく、NPOやボランティア団体、老人クラブなどの地域住民などが参画できるようになりました。地域全体で高齢者を支える仕組みをとることで、地域全体が活発になることも期待されています。

総合事業は「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」の2つ

総合事業は「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」の2つに分けられます。対象者や行われるサービス内容には、それぞれ違いがあります。

介護予防・生活支援サービス事業では、「介護認定によって要支援1もしくは2と判断された人」と、「生活状況などを簡易的に質問した基本チェックリストによって該当者となった人」が対象となります。行われるサービスには「訪問型サービス」「通所型サービス」「生活支援サービス」の3つがあります。

訪問型サービスは、さらに次の3種類があります。

  • 既存の訪問介護事業所による身体介護および生活援助
  • NPOや民間事業者などが行う掃除や洗濯などの生活支援サービス
  • 住民ボランティアによるごみ出しなどの生活支援サービス

通所型サービスには次の4つがあります。

  • 既存の通所介護事業所による機能訓練などの通所介護
  • NPOや民間事業者などが行うミニデイサービス
  • コミュニティサロンや住民主体の運動、交流の場
  • リハビリや栄養、口腔ケアなどの専門職が開催する教室

生活支援サービスで代表的なものは次の2つです。

  • 栄養改善を目的とした配食サービス
  • 住民ボランティアなどが行う見守り

訪問型と通所型では、新規に民間事業者が参入することが可能となっています。

特色豊かな介護予防・日常生活支援総合事業のサービスを見てみよう

2017年3月までに完全移行が義務付けられたこともあり、2018年8月現在は1578自治体すべてで「介護予防・生活支援サービス事業」が行われています。この「介護予防・生活支援サービス事業」は各自治体で大きな差はありません。

一方、「一般予防サービス」では、各自治体によって実にさまざまなサービスが提供されていますが、大きくは次の3種類に分けられます。

  • 運動機能の維持および向上
  • 認知症予防
  • 閉じこもり予防

運動機能の維持および向上には、地域独自の介護予防のための体操やウォーキングなどがあります。例えば、福岡県北九州市では、日常生活で行う動きを取り入れた「きたきゅう体操」や、太極拳の動きを取り入れた「ひまわり太極拳」が行われています。「ノルディックウォーキング」や「水中ウォーキング教室」などの高齢者でも負担の軽い運動教室は、複数の自治体で開催されています。

認知症予防では、体を動かしながら脳トレを行う教室などのサービスが提供されています。奈良県生駒市では、国立長寿医療研究センターが開発した認知症予防運動プログラム「コグニサイズ」教室を開催しています。長野県安曇野市では、「ファイブ・コグ」という検査を通じて認知症予防に取り組む方法をとっています。

閉じこもり予防では、さまざまなサロンの開催やボランティアへの参加促進などが各自治体で行われています。厳島神社で有名な広島県の宮島では、老人クラブが主催する健康マージャン教室を通じて、地域交流や仲間づくりの場を提供しています。

このように総合事業では、各自治体が工夫することで、特色豊かなサービスの提供を可能にしています。

介護予防・日常生活支援総合事業はまだ始まったばかり

総合事業が全自治体で始まって1年が経ちましたが、関係者間の意識の共有や地域のニーズの把握、担い手の確保など、解決すべき課題はまだ山積みの状態といえます。しかし、事業所にとっては、従来よりも基準が緩和されて新規参入しやすいというメリットがあります。今後の動向に注目していきましょう。

 

参考:

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