排泄ケアの新概念「ソーシャルコンチネンス」でめざす自立排泄とは

自立排泄と聞いて、どのような状態を思い浮かべますか? 多くの人は、「ひとりでトイレに行き、失敗なく排泄ができる」状態を想像するのではないでしょうか。近年、排泄の自立に関する考え方は少しずつ変わってきています。そのようななか、新しい排泄ケアの概念として注目されているのが、「ソーシャルコンチネンス」です。ソーシャルコンチネンスとは「排泄の社会的自立」という意味ですが、どういうことなのか理解できない人も多いでしょう。排泄ケアの新概念「ソーシャルコンチネンス」と自立排泄について詳しく解説します。

 

高齢者の自立排泄の概念と「ソーシャルコンチネンス」

自立排泄と聞くと、「ひとりでトイレに行き、失敗なく排泄ができる」ことをイメージする人が多いでしょう。ところが、高齢者のなかにはトイレに間に合わなかったときに、ひとりでトイレに行きパッド交換ができる人もいます。このような人は、介護の手を必要としておらず、排泄面については自立していると考えることが自然ではないでしょうか?

実は、高齢者の自立排泄の概念には、「機能的自立排泄」と「社会的自立排泄」があります。

機能的自立排泄とは、トイレで排泄ができることです。ひとりでトイレに行き失敗なく排泄ができる状態は、介護を必要としない機能的自立排泄となります。

社会的自立排泄は、トイレで排泄物を衛生的に処理できることを指しています。トイレに行きひとりでパッド交換ができる人は、介護を必要とせず、社会的自立排泄ができる状態です。この社会的自立排泄を「ソーシャルコンチネンス」といいます。

これまで高齢者の自立排泄では、トイレで排泄することが目標とされていました。しかし、これからは、高齢者の残存能力に合わせてそれぞれの自立をめざす、ソーシャルコンチネンスの考え方が重要になっていきます。2018年には「排泄支援加算」が創設されたこともあり、介護施設でも入居者の自立排泄支援の重要性はますます高まってきているのです。

 

自立排泄をめざすための排泄ケア「コンチネンスケア」を知ろう

では、ソーシャルコンチネンスも含めた自立排泄をめざすためには、どのように排泄ケアを行ったらよいのでしょうか。

今注目されている排泄ケアに「コンチネンスケア」があります。コンチネンスとは、排泄が正常な状態であることを指す言葉で、尿や便がもれない状態をいいます。

コンチネンスケアでは、排泄に関する問題を、失禁だけでなく、排泄しにくい状態も含めて「排泄障害」ととらえて対処することにより、自立排泄をめざすケアを行います。具体的には、以下の4段階で排泄障害のある高齢者の問題点と解決策を検討し、自立排泄への支援を行います。

  1. 背景として何が考えられるか

病気や心身状況、薬の服用状況など、排泄障害を起こしている原因について考える。

  1. この状態で、誰が何に困っていると考えられるか

排泄障害が起こっていることにより、介護者や本人がどのようなことに困っているかを考える。

  1. さらに何を知る必要があるか

自立排泄をめざすうえでさらにどのような情報が必要かを洗い出す。

  1. 解決に向けたアプローチ

本人だけでなく介護者や家族も含め、誰に何を使ってどのような方法で、今起こっている問題を解決するかを考える。

 

自立排泄に向けたコンチネンスケアを広めるTENAの取り組み

自立排泄に向けたコンチネンスケアには、おむつメーカーも注目しています。世界100か国以上で多くの人に愛用されている排泄ケアブランドTENA(テーナ)では、施設や病院向けにコンチネンスケアに関わるセミナーを全国で開催しています。セミナーでは、コンチネンスケアを理解して現場で実践するためのリーダーを育成します。

また、TENAを販売するユニ・チャームメンリッケ株式会社では、コンチネンスケアを導入する施設に専属のアドバイザーを派遣しています。派遣対象となるのは、TENAを導入しコンチネンスケアに取り組んでいる事業所で、各施設や病院で実施される組織的な排泄ケアの改善活動のサポートを行っています。

山形県の「特別養護老人ホームゆうすい」や埼玉県の「特別養護老人ホーム常盤苑」のように、介護施設でもコンチネンスサポートチームを立ち上げ、自立排泄に向けたコンチネンスケアを行うところが増えてきています。今後、ますますコンチネンスケアは広がっていくことが予想されます。

 

これからの自立排泄支援は「ソーシャルコンチネンス」が目標になる

これまでの自立排泄支援は「ひとりでトイレに行き排泄できること」を目標としていました。しかし、介護を必要とせず誰にも迷惑をかけずとも自立した排泄を行うということは、それだけではありません。排泄に失敗があっても自力でパッド交換できる人や、介助者がトイレに連れていくことができれば気持ちよく排泄できる人もいます。これからは、自立排泄支援の目標は「トイレで排泄できること」から、「それぞれの能力に応じた排泄の自立」となっていくことでしょう。

 

参考:

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