脳トレの効果について考える 介護施設が取り入れるべきレクリエーションとは

いまや、世間ですっかり定着した「脳トレ」。介護施設のレクリエーションでもよく取り入れられていますが、せっかくなら、効果的に行いたいものです。脳トレとはどのようなものかあらためて見直し、効果を引き出しやすいレクリエーションへの取り入れ方、おすすめの脳トレについてご紹介します。

 

■そもそも脳トレとはどんなもの?

「脳トレ」の本来の名称は「脳力トレーニング」といい、脳を活性化させるためのトレーニングの総称として、2000年代初頭から知られるようになりました。脳トレには、クイズやパズル、計算・漢字ドリル、カードゲーム、ボードゲーム、塗り絵、手芸など、実にさまざまなものがあります。こうしたアクティビティでふだんとは異なる脳の使い方をしたり、指先を使って作業をしたりすることが脳に良い刺激を与え、認知症の予防や認知機能の低下を防ぐといった効果が期待されることから、多くの高齢者介護施設のレクリエーションに取り入れられています。

 

また、脳トレといえば、以上のようなインドア型のアクティビティのイメージが強いかもしれませんが、レクリエーションとして散歩や園芸などアウトドア型のアクティビティを行う施設もあります。参加する本人が楽しみにしていて、知的な刺激を受けるのであれば、広義の脳トレになるでしょう。楽しみができれば、生きる意欲や生きがいにもつながります。

 

もともと高齢者施設のレクリエーションは利用者の身体・認知機能の維持、向上を目的としたものですが、その内容や週に何回、どれくらいの時間行うかは施設の種類や規模によってまちまちです。利用者が疲れない範囲でおおよそ1時間以内を目安としてレクリエーションの時間を設けている施設が多いようです。

 

また、レクリエーションのなかで、どのように脳トレを行うかも施設ごとに異なります。レクリエーションの時間全体を使って参加者全員でゲームをする、10分程度で、一人でできるドリルやパズルなどを複数用意するなど、いろんな脳トレの取り入れ方がありますが、大切なのは利用者の興味や体調にあわせるということでしょう。

 

■脳トレの効果を引き出すために大事なコト

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脳トレの効果を引き出すためには、参加する本人が興味を持ち継続して取り組めることが重要です。意欲や興味は脳トレを続けるうえで、また認知機能を維持するうえでも欠かせないものですから、レクリエーションで脳トレを行う場合は、無理強いはよくありません。とはいえ、参加の促し方にも少し配慮が必要です。

 

介護施設のレクリエーションの時間は多くの利用者さんが集まるサロンのような場ですから、初めての利用者さんの場合、気後れして参加しづらいこともあります。そのときは、既に施設を利用している同性の方に紹介しながら、あいさつを促すなどのきっかけづくりをしてあげましょう。集団行動を苦手とする人もいるので、大人数でゲームなどをする場合は、一人でもできる塗り絵やドリルなどを別に用意して、無理に参加しなくてもよい雰囲気にしておくことも大事です。

 

また、高齢者の場合は体調にも注意が必要ですから、疲れていそうな人には早めに切り上げるよう声がけしましょう。一方、集中しているのに無理にやめさせるのもよくありません。その場合は、レクリエーションの終了時間の前に余裕を持って「あと○分で終わりですよ」などと伝えるようにします。

 

そのような配慮をしながら、それぞれの利用者さんが興味を持てるゲームを用意したり、興味の対象がよくわからない利用者さんに向けては興味を持ってもらうための工夫をしたりしましょう。ワーキングメモリーを鍛えるなど実際の効果をイメージさせるのもいいでしょう。

 

例えば将棋やリバーシゲームなど、ゲームが好きな利用者さんのために、決まった曜日のレクリエーションの時間にいつもゲームの道具を用意しておけば、毎週楽しみにしてもらえます。何に興味があるかわからない人には、ゲームなど「やってみませんか?」とストレートに誘うだけでなく、「これ、むずかしいので手伝ってもらえませんか?」「これをやると頭がスッキリするみたいですよ」など、世間話のような声がけをしながら、興味の対象を探ってみてはどうでしょうか。ちょっとした誘い方の工夫によっては、新しく興味を持てるものがみつかるかもしれません。

 

■介護施設が取り入れるべき脳トレは

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近年は「脳トレ」をうたったゲームやドリルなどが数多く販売されています。もちろん、そうしたものを利用するのもいいですが、脳トレには、紙やホワイトボードだけ、あるいは何も道具を使わなくてもできるものもあります。そうしたものをいくつかご紹介します。

 

<道具のいらない脳トレ>

・後出しジャンケン

先に司会者がじゃんけんの手を出し、参加者は司会者に後出しで必ず勝つようにします。例えば、司会者が「グー」を出したのに対し、「パー」を出せれば成功。少しずつテンポを早めたり、後出しで負ける、右手は勝つ・左手は負けるようにしたりするなどルールをアレンジしても楽しめます。

 

<ホワイトボードを使った脳トレ>

初めに、参加者全員にホワイトボードが見えるよう座ってもらいます。

 

・連想ゲーム

司会者が「〜といえば、〇〇」と言いながら、ホワイトボードにお題を書く(例:夏→海)。連想する単語を順番に参加者に言ってもらい、続けていく(例:夏→海→青い)。単に連想を促すのではなく、会話のキャッチボールや雑談を引き出すようにしましょう。

 

・ことば探し

参加者には筆記具と紙を配り、司会者がホワイトボードにひらがな1文字を大きく書きます。できるだけたくさんの単語を書く、できるだけ長い単語を書くなどルール決めて、参加者は、その文字から始まる単語を考えて紙に書き出します。個人での回答がむずかしい場合はグループ戦にしてもいいでしょう。

 

<道具を使う脳トレ>

・昔ながらの遊び道具

将棋や囲碁、麻雀、トランプ、花札など、昔からあるボードゲームやカードゲーム類にも脳トレ効果が期待できるものも少なくありません。利用者さんの年代的に馴染みのあるものが導入しやすいと思われます。

 

・パズル、塗り絵

写真や絵柄のパズル、塗り絵はお城などの名所、季節の花、動物などの図柄がおすすめです。絵柄を見ながら「きれいなお花ですね」「ネコは好きですか?」など、コミュケーションによる導入がしやすいというメリットがあります。

*塗り絵については、こちらの記事もご覧ください。

「介護現場でのストレス解消や脳トレにも最適。大人の塗り絵のうれしい効果とは?」

介護施設で脳トレを行う場合、ゲームなどの勝敗や達成度にこだわるのではなく、スタッフと利用者、また利用者間のコミュニケーションが活性化し、楽しい雰囲気をつくることが大事です。それにより、レクリエーション以外でも施設内のコミュニケーションの円滑化も期待できます。

 

■まとめ:脳トレで介護施設入居者のQOLを向上

脳トレの効果を引き出すには、高齢者本人が興味を持って取り組めること大切です。楽しみながら脳トレができれば、認知症予防のみならず、施設内のコミュニケーションも活性化するという効果も期待できます。また、実質的な効果をイメージすることで、利用者の方々のモチベーションアップにもつながります。楽しく脳トレを続けて、利用者のQOL向上を図りましょう。 

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