介護ICT補助金ってなに? 上手に活用して見守りカメラやスマホ業務アプリなどの導入を

慢性的な人材不足が続く介護現場では、ICT導入による業務改善が不可欠といわれています。とはいえ、ICTを使った設備やシステムの導入には費用がかかるうえ、どのような設備が現場の課題やニーズに合うのか判断が難しいケースもあるでしょう。費用については、ICT導入を目的とした国や自治体などによるさまざまな支援や補助金の制度が用意されています。これらの制度の概要と制度を活用して導入したい設備やシステムを紹介します。

介護ICT補助金とは? 業務効率化に活用したい国や自治体の制度

「介護ICT補助金」は正式な用語ではなく、国や自治体が実施する介護現場のICT化を支援する複数の事業や補助制度の総称として、近年インターネット上で広く使われています。いずれも介護現場の負担軽減とサービスの質の向上を目的とした制度で、ICT機器の導入費用の一部を国や自治体が支援するものです。

この記事では、介護ICT補助金を、介護事業所がICT機器やシステムを導入する際に活用できる各種公的支援の総称とします。単一の制度ではなく、国や都道府県、市区町村などの公的機関がそれぞれ用意している支援策を指します。また、対象となる製品も多岐にわたります。まずは、概要を知っておきましょう。

介護ICT補助金の種類と概要(介護施設向け)

介護ICT補助金の制度の目的はICT導入による介護現場の業務効率化です。介護施設向けの補助金の種類と概要を紹介します(カッコ内は実施主体)。

1. 介護職員等ベースアップ等支援加算と連動するICT導入支援(厚生労働省/申請先:自治体)

目的:介護現場の業務負担軽減・効率化

対象:介護記録ソフト、タブレット、ナースコール、見守りセンサーなど

特徴:ICT導入で事務作業を減らし、職員が利用者に向き合う時間を増やすことがねらい

補助率:自治体により異なるが、費用の1/2〜3/4程度が補助対象になる場合が多い

2. 介護ロボット導入支援事業(厚生労働省/申請先:自治体)

目的:介助作業の身体的負担軽減・安全確保

対象:移乗サポート機器、排泄支援機器、見守りロボットなど

特徴:ICTと連動するセンサーや機器も対象

補助率:導入費用の1/2〜2/3程度を補助

3. 介護施設・事業所におけるICT導入支援事業(都道府県や市町村独自)

目的:地域ごとにICT普及を推進

対象:タブレット、Wi-Fi環境整備、介護ソフト導入費のほか、介護記録システム、見守り機器、ナースコール連携、業務支援アプリなど自治体が認めるICT関連機器・システム全般

特徴:自治体が独自で実施。募集期間や対象経費は自治体ごとに異なる

補助率:1/2〜3/4程度が一般的

4. 科学的介護推進体制加算(厚生労働省/届出:自治体)に関連するICT活用

目的:既存のデータベース「CHASE」と「VISIT」を統合した科学的介護情報システム「LIFE」へのデータ提出を支援

対象:科学的介護情報システムに対応したソフトや機器

特徴:加算を取得するためにICT整備が必須となるケースあり。科学的介護推進体制加算とは別制度のICT導入支援を連動して活用することで、現場への大きなメリットが期待できる

5. その他の関連補助金

・ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(全国中小企業中央会)

中小企業向けの制度で、介護事業所も対象になる場合あり。大型のICT投資で活用可能

・IT導入補助金(中小企業庁)

業務管理システムやクラウドサービス導入で利用できるケースあり

見守り機器と業務アプリで変わる介護現場

以上のように、介護現場への導入にあたり多様なICT製品が支援の対象となっています。これらのなかでも多くの現場での活用が期待できるのが、見守りカメラ/センサーとスマートフォン連動の介護業務アプリです。

見守りカメラやセンサーは、転倒事故の早期発見による利用者の安全確保に大きく貢献します。これまで人が行ってきた利用者の安否確認のための見守りや巡回業務はスタッフの時間を大きく取られるものでした。見守りカメラ/センサー導入により、利用者のプライバシー保護や家族への説明など配慮は必要ですが、スタッフの負担は大幅に削減できるでしょう。

また、介護業務アプリは、介護記録、請求業務、スタッフ間の情報共有など多様な間接的業務の効率化をサポートするツールです。スマートフォンと連動させることで、スタッフは手元のスマホアプリでいつでもどこでも介護記録や申し送りを入力・閲覧でき、リアルタイムの情報共有も可能になります。製品の選定にあたっては、デジタルツールに不慣れなスタッフにも扱いやすいアプリを選ぶことが、導入成功のポイントです。すべてのスタッフにとって、記録をはじめとする間接的業務の大幅な効率化が実現できます。

補助金活用の進め方と申請時の注意点

補助金の申請には、計画立案から採択(*)後の報告まで段階的な手続きが必要です(*補助金の対象者として選定されること)。制度によって、採択数が限られていたり、審査を要する場合があります。多くの場合、事業計画書や見積書、契約書などが必要なのは共通しますが、申請要件や締切り、提出書類、手続きの方法等は制度ごとに異なりますが、おおまかな申請ステップは共通しています。

1)申請書類の提出:指定された書類を揃えて提出します

2)書類審査:書類の不備がないか、事業計画が支援対象として適切かなどがチェックされます

3)制度によっては、面接や現地調査、その他審査が行われます

4)採択通知:審査を通過した申請者に送られます。対象事業をスタート

補助金は公的資金であることから、本来の目的以外の用途には使用することはできません。採択後は適正な支出管理が求められ、定期的な事業報告が義務づけられることが一般的です。そのため、事業開始後の作業や手続きについてもイメージしておくことも大切です。

補助金の獲得には、早めの情報収集と綿密なスケジュール管理が欠かせません。申請を検討する際は、まずは公募要項を入手して、制度の目的、申請要件、支援対象外となる条件、手続きのフローをしっかりと確認しましょう。設備やシステムの導入が前提になりますが、補助金を活用した納入に慣れた業者を選ぶことも、申請手続きをスムーズに進めるうえでポイントになります。他社の成功事例や経験談の確認もおすすめです。

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