高齢者施設における新型コロナワクチンの現状を知ろう

新型コロナワクチンの接種が2021年2月から始まりました。現在は、医療従事者や高齢者から優先的に接種を行っている状況です。今回は、高齢者をめぐる新型コロナワクチンの状況について、詳しく見ていきましょう。

新型コロナワクチンの概要

高齢者への新型コロナワクチン接種の状況とともに、新型コロナワクチンの概要をあらためて説明します。

新型コロナワクチンの現状

新型コロナワクチンは、2021年2月半ばに医療従事者等を対象として接種が始まりました。同年4月半ばからは高齢者(65歳以上)への接種も開始されています。高齢者については、ワクチンの量も確保されており、2回目の接種が7月末までに終わることを目標に進められていました。

65歳未満の人については、多くの自治体で7月から接種が開始されています。また、企業や学校などの団体単位でワクチン接種を行う「職域接種」も始まりました。しかし、高齢者に比べ65歳未満の人向けのワクチン供給量が不安定なため、自治体によっては新規の予約を中止している場合もあります。職域接種についても、国の想定を超える申請があり、ワクチンの供給量を上回る可能性があるため、6月25日段階で申請が一旦休止となっています。

高齢者と新型コロナワクチン

首相官邸が発表している資料によると、2021年8月1日時点で、65歳以上の1回目接種率は86.22%、2回目接種率は75.76%となっています。接種率は各自治体によって差がありますが、1回目接種率がもっとも低い 大阪府でも約82%の高齢者が接種を終えています。また、2回目の接種については、少ない自治体で約68%、もっとも多い自治体では約87%が接種を終えている状況です。

国は、高齢者の接種の見通しがつき次第、基礎疾患の人も含めて広く一般への接種を開始すると発表しています。65歳未満の人の接種が始まっている自治体が増えてきていることから、高齢者の接種状況については、めどがついていると考えられるでしょう。

新型コロナワクチン接種は強制ではない

「新型コロナワクチンは、国民全員に接種が勧められているが強制ではない」

「新型コロナワクチンについての情報を提供したうえで、同意を得られた人だけが接種を受ける」

「接種を強制したり、接種してない人を差別してはいけない」

新型コロナワクチンは、国民全員に接種が勧められています。しかし、接種するか否かは個人の判断にゆだねられており、強制ではありません。新型コロナワクチンについての情報が提供されたうえで、同意した人だけが接種を受ける仕組みとなっています。したがって、接種を強制することや、接種していない人を差別することは、絶対にあってはなりません。「新型コロナワクチン接種は強制ではない」ことは、しっかりと覚えておきましょう。

高齢者施設では接種率を上げるためにどうしている?

高齢者施設の入所者や従事者について、接種の進め方や見解を厚生労働省が示しています。入所者と従事者それぞれについて、詳しくみていきましょう。

入所者の新型コロナワクチン接種

施設に入所している高齢者の新型コロナワクチン接種のタイミングは、一般の高齢者と同じ優先順位となります。まずは、入所者本人にワクチン接種を希望するかどうかを確認します。入所者の容態によっては意思表示が難しい場合もあるでしょう。本人の意思確認が難しい場合は、家族が同意すれば接種できることになっています。

ワクチンを接種する場所には、大きく分けて次の2種類があります。

  • 基本型接種施設

直接ワクチンの配送を受けて接種を実施する施設。

  • サテライト型接種施設

基本型接種施設の近隣にあり、基本型接種施設から冷蔵でワクチンを移送して接種を実施する施設。

高齢者施設において、この2施設での接種が難しい場合には、これらの施設からの巡回接種による実施も可能となっています。また、医療の提供を行う介護保険施設の場合、市町村と予防接種にかかわる集合契約を締結すれば、「サテライト型接種施設」として接種を実施できます。

国が示す施設の種類別に想定される接種方法は次のようになっています。なお、施設がこれ以外の方法を選択しても接種が妨げられることはありません。

  • 介護老人保健施設・介護医療院・介護療養型医療施設

自施設がサテライト型接種施設となって接種

医療機関を受診できる人が自ら接種施設を選択 など

  • 介護老人福祉施設

基本型接種施設もしくはサテライト型接種施設による巡回接種

医療機関を受診できる人が自ら接種施設を選択 など

  • 有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホームなど

医療機関を受診できる人が自ら接種施設を選択

かかりつけの往診医が接種可能医療施設に所属している場合は、施設内で接種 など

入所者へのワクチン接種の流れ

入所者がワクチン接種を希望する場合には、施設側は次のような流れで接種を進めていきます。

  1. 入所者への説明

接種を希望する入所者に、接種券の持参や予診票への記入が必要なことを説明する。基本的に本人の住所地での接種となるが、高齢者施設に入所している場合は、接種場所の例外に該当するケースが多く、接種券が届くまでに時間がかかることも伝える。

  1. 接種予定者リストの作成

接種予定者のリストを作成する。接種施設や接種可能医療施設で接種を希望する場合は、接種場所も把握しておいたほうがよい。自施設で接種をする場合は、リスト作成は必須。

  1. 基本型接種施設もしくは接種実施医療機関への申告

自施設で接種を実施する場合は、接種希望人数をまず把握する。そのうえで、サテライト型接種施設に該当する施設は基本型接種施設へ、そのほかの施設は接種実施医療機関へ申告する。

以上が、ワクチン接種の流れとなります。

高齢者施設従事者の新型コロナワクチン接種

高齢者施設に従事する人の新型コロナワクチン接種については、クラスター抑止の観点から、高齢者の次に優先順位が高いとの見解が国から出ています。ここでいう「高齢者施設従事者」とは、主に次に示す高齢者施設で利用者に直接接する職員で、職種の限定はありません。

介護老人保健施設/介護老人福祉施設/地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護/介護療養型医療施設/介護医療院/特定施設入居者生活介護/認知症高齢者グループホーム/地域密着型特定施設入居者生活介護/養護老人ホーム/軽費老人ホーム/有料老人ホーム/サービス付き高齢者向け住宅/生活支援ハウス

また、医療機関と同一施設内にある介護老人保健施設と介護医療院については、施設の判断により医療従事者の対象とすることも可能です。

高齢者施設の従事者が新型コロナワクチンを接種できるタイミングは、本来は高齢者の後となっています。ただし、一定の条件を満たす介護保険施設や高齢者施設は、高齢者と同じタイミングで接種しても差し支えありません。要件の目安は以下のとおりです。

  • 市町村と施設の双方が体制を整えられる
  • 入所者と一緒に接種することが効率的と考えられる
  • 施設全体の入所者の日常的な健康管理を行う医師等が確保されていて、接種後の健康管理が可能である

ワクチン接種後もコロナ対策は継続しよう

新型コロナワクチンの接種が始まり、高齢者の接種率は日々上がってきています。これからは、施設従事者の接種率も高まることでしょう。しかし、ワクチンの接種は強制ではないため、接種を希望しない人もいます。さまざまな人が利用し、従事する介護施設においては、新型コロナワクチンを接種したからといって安心するのではなく、今後もコロナ対策を継続していくことが大切です。

 

参考:

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