アセスメントとは? 介護におけるロジカルな介護計画

「評価・査定」という意味を持つ「アセスメント」という言葉があります。介護の分野でも使われる言葉ですが、アセスメントとは介護計画(ケアプラン)を立てる上で、介護を受ける人が希望する生活の障害となる課題を見立てることです。利用者の生活のニーズを明らかにするためには、適切なアセスメントをおこなうことがとても重要になります。介護においてのアセスメントとはどのようなことなのか、介護の現場に欠かせないアセスメントについて解説します。

介護においてのアセスメントとは

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介護を必要とする人が適切なサービスを受けられるようサポートすることを、「ケアマネジメント」といいます。ケアマネジメントのプロセスは段階別に区分されており、アセスメントはこのプロセスを構成する段階のひとつです。

具体的には、ある高齢者に介護が必要となったとき、介護保険を利用して適切なサービスを受けるために介護支援相談員(ケアマネジャー)に相談することからケアマネジメントが始まります。ケアマネジャーはこの相談の段階で、利用者の生活への希望やニーズの聞き取りをします。

介護におけるアセスメントは、この次の段階でおこなわれるものです。利用者が希望する生活を実現する上で、その障害となっている問題や状態が何かを見極め解決するべきニーズを明確にします。基本的にアセスメントをおこなうのはケアマネジャーですが、事業所によっては介護スタッフが自分の受け持つ利用者のアセスメントをおこなうケースもあります。アセスメントは、いわばケアプラン立案にあたっての土台づくりとなりますが、単純にどのサービスを提供するか選定すればいいというものではありません。

例えば、同じ要介護度でも人によって障害の内容は異なり、必要とする支援も異なってきます。また、歩行が困難となっている人に対し車イス介助を提案しても、本人ができるだけ自力で移動したいという思いが強いと「車イス介助」そのものが希望する生活実現の障害と考えられます。この場合、「自力で安全に移動できる手段」が最終的な目標となるでしょう。

このように、アセスメントは個々の利用者の心身の状態のみならず、人柄や考え方などもよく理解しながら、本人が望む生活の状態を達成する上で実質的に必要なサポートは何かということを明らかにするためのものです。

 

ケアマネジメントの過程とアセスメントの位置づけ

ここで、ケアマネジメントのプロセスとアセスメントの位置づけをみておきましょう。ケアマネジメントはこのようなフローで進められます。

 

1)相談:利用者の希望やニーズを引き出す

2)アセスメント:利用者の状況を把握し、希望する生活への障害となっている課題をみつけ、アセスメントシートを作成する

3)介護計画(ケアプラン)の作成:利用者の状況を総合的に判断し、課題を解決するための手立てを検討する

4)介護計画(ケアプラン)の実施:実際にサービスを提供する

5)モニタリング:サービス提供の状況を継続しながら定期的にチェックする

 

アセスメントはケアマネジメントのプロセスにおいて2段階目の作業となり、このときアセスメントシートが作成されます。介護は多職種で連携しておこなうことから、アセスメントシートは連携するスタッフ間で共有されます。

ケアマネジメントのプロセスは循環しており、5)において利用者の抱える問題が解消されていない場合、必要に応じて再度2)のアセスメントをおこない、さらなる改善を目指したケアプランを立案します。

利用者の状況が変わることで再アセスメントをおこなうこともありますが、アセスメントが適切になされていなければ、利用者の課題やニーズの解消とはなりません。その場合には、アセスメントの段階から見直すことになります。このように、アセスメントの質は以降の段階であるケアプランや実際に提供されるサービスの質に影響することがわかります。

 

介護計画におけるアセスメントの重要性

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このように、アセスメントはケアマネジメントの過程において、介護方針の舵取りを担う重要な作業といえます。利用者にとって適切なサービスを提供するためには、ケアプランはロジカルなものでなければなりません。それは、どのような問題があるのか、利用者は何を必要としているかを客観的に把握し、実際にそのニーズに答えるということです。

そのためには、アセスメントの段階で多方面の専門家や機関などと連携しながら利用者本人の心身の状態を客観的に観察・確認し、生活全般にわたる利用者の能力を把握することになります。例えば、利用者のADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作)について詳しく知るためには、作業療法士や理学療法士といったリハビリテーションの専門家との連携が必要でしょう。また、アセスメントに先だって、さまざまな関係先から利用者についての情報を収集しておくことも大切です。家族をはじめ、かかりつけ医や地域包括支援センターなどから利用者の状況についてなるべく具体的な情報を集めるようにすれば、本人の希望やニーズをよりきめ細かく把握することに役立ちます。

こうした利用者本人の心身の状態や周囲の状況についての情報に加え、とても重要になるのが、利用者の人柄に目を向けることです。個人として何を大切にしているかといった価値観や考え方、ライフスタイルやこれまでに生きてきた環境など、人間像を総合的にみるようにしましょう。提供されるサービスが、本人の希望する生活の実現につながるものでなければ本来の自立支援とはいえません。したがって、利用者の人間像をよく理解し、本人が望む自分らしい生活とはどのようなものなのか、その実現のためにはどのサービスで解消、あるいはサポートできるのかを考え、利用者の生活における課題を明らかにすることが必要です。

さらに、介護方針については利用者本人だけでなく家族のニーズや視点もからみあい、本人と家族の意向が食い違うことがあります。その場合、アセスメントをもとに適切なケアプランを立案するためには、私的な感情や推測を含めず、ロジカルに考えることが大切です。客観的な事実のみをリストアップすれば、課題が見えやすくなります。

 

介護の質はアセスメントで決まる?

ケアプランをつくる上で欠かせないアセスメントですが、その内容は介護の方針や質に大きく影響します。質の高いケアプランをつくり、適切なサービスを提供するためには、アセスメントの質も高くなければなりません。それには、多方面からの情報収集や他職種との連携により、利用者の状態をよく把握することが欠かせません。

これに加え非常に重要になるのが、利用者本人の「その人らしさ」をよくとらえることです。ケアマネジメントの目的は、利用者が望む生活を実現するために真に必要とされるサービスを受けられるようにすることです。アセスメントシート作成にあたっては、利用者本人から得た情報を重視することを心がけましょう。

 

 

 

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