思いやりあるトイレ介助とは? 介護施設が考えるべきプライバシーへの配慮

トイレに行くことは誰にとっても日常的な行為ですが、非常にプライベートでデリケートな事柄でもあります。自力でトイレに行けるかは個人の自立や自尊心に大きく関わり、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)にも影響します。したがって、トイレ介助の際は介護される人のプライバシーや尊厳に対する細心の配慮が欠かせません。また、トイレ介助は介護される側、介護する側の双方に大きな負担を伴う作業です。介護施設でのトイレ介助におけるプライバシーへの配慮、介護する側・される側の負担を減らす工夫について考えます。

 

トイレ介助にプライバシーへの配慮が不可欠な理由

トイレ介助は、食事や入浴の介助とともに、介護の基本となる三大介助(護)の一つで、自立した排泄を目標にサポートします。一方、介助される利用者にとっての排泄は、最もプライバシーや自尊心に関わるものです。

トイレを介助してもらう際に、利用者が「恥ずかしい」「失敗した」と感じることがあれば、プライドが傷ついてトイレを拒否するようになったり、自立への意欲が低下したりする可能性があります。特に「失敗した」場合は介護される側・する側の両方が気まずい思いを味わうこととなり、利用者としては次からトイレに行きにくくなって介助も依頼しづらくなります。

こうしたことが頻繁に起きるようでは、健康への悪影響やQOLの低下を招いてしまいますから、排泄・トイレ介助では利用者のプライバシーと尊厳への配慮が求められます。また、利用者が自らトイレに行きやすく、排泄介助を依頼しやすい雰囲気をつくることも大切です。

 

利用者の状態に合わせた配慮を

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トイレ介助の方法や必要な備品等は、利用者の状態(要介護度)によって異なり、配慮の仕方も少しずつ違ってきます。ここでは、寝たきりの方とトイレを使う方への介助の方法、準備の仕方、配慮すべきことについて説明しましょう。まず、いずれのケースでも介助に必要な備品や消耗品などは事前に用意しておく、利用者の負担をできるだけ短くすることが必要です。

<寝たきりの人に対する排泄介助>

・リハビリパンツやおむつを交換する際は、第三者の目に触れないようにドアやカーテンを閉めプライバシーを十分に配慮して、手際よく処理します。

 

<トイレでの介助>

・利用者自身ができることはなるべく自分でやってもらい、できないことのみを介助するのが基本です。

・転倒には十分注意しましょう。動作が不安定な利用者は便座に座るまで必要に応じて介助し、見守ります。

・利用者がトイレの個室内にいる間は、なるべく出入口の外から見守ります。

・排泄を急かさないようにします。

・冬場はトイレの中と外の温度差に注意が必要です。トイレ内が寒くないように配慮しましょう。

 

思いやりあるトイレ介助のために

以上に加えて、利用者のプライバシーや自尊心に配慮した思いやりあるトイレ介助を実現させるためには、次のようなことを意識しましょう。

・利用者が見られたくない・知られたくないと感じる全ての場面でプライバシーへの配慮が必要です。要介護度が高くなればなるほど、利用者のプライバシーへの配慮を注意する必要があります。そのため、寝たきりの人やポータブルトイレを使う人を介助する際は、第三者から見えないようにドアやカーテンを閉める、自力でトイレに行ける人の場合も必ず外から見えないようにする、介助前や介助中は周囲に聞こえるような大声で話しかけないなど、声がけにも注意をはらいましょう。

 

・利用者の自尊心や自立心の維持向上のためには「失敗」を避けることも大切です。それには、早めにトイレへと誘導するのが有効です。認知症などで尿意や便意がわかりづらい人もいます。サイクルを把握して声掛けはトイレに行きやすい時間帯にする、食事が済んだ後など、時間を決めてトイレに行く習慣づけをしましょう。ただし、高齢者の場合などは自分でトイレに行ける人でも尿意を感じてからの動作に時間がかかり、間に合わず「失敗」してしまうことがあります。そのようなケースの備えとしては、利用者の膀胱内で起きている変化を捉え、介護者にトイレのタイミングを伝えるセンサー機器の導入を検討してはいかがでしょうか。

 

・介護スタッフは利用者の体調をチェックするため、トイレの状況を観察する必要がありますが、その状態については利用者に話さないようにし、介助中はサラッとした声かけを心がけましょう。

 

・トイレ介助は介助する側・される側の両方にとって大きな負担を伴うものですが、利用者を決して急かしてはいけません。急かされると焦って失敗する可能性が高まります。また、失敗しても責めないようにしてください。

 

・自立を目指すには可能な限りトイレに行って排泄することが大事です。そのため、トイレでできる人に対しては夜間や外出など、本人に不安がある時だけ尿とりパッドを使い、安易にオムツを使用することは避けるのが賢明です。スタッフが忙しい、本人も面倒がっているなどの理由で安易にオムツを使うと、利用者の自尊心や自立心が低下し、尿意・便意を感じにくくなってしまうこともあるため、ADLの低下につながります。

 

トイレに行きやすい雰囲気づくりを

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トイレ介助は介護スタッフにとっても負担の大きな業務です。また、トイレのタイミングは人によって異なるため、一律なペースでできないのも難しい点ですが、例えば食後や就寝前などのように、ある程度トイレの時間を習慣化しておけば、利用者はトイレに行きやすくなるでしょう。

また、トイレ介助をしてもらうことへの抵抗感を減らし、介助を依頼しやすくすることも、トイレに行きやすい雰囲気づくりには重要です。そして、そのカギとなるのが介助の際の配慮や思いやりです。利用者が自分からトイレに行きやすい雰囲気をつくれば、介護する側の負担も軽減します。トイレに行くことや排泄介助の依頼がおっくうにならないような雰囲気づくりを心がけましょう。

 

 

 

 

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