ノーマライゼーションとは何か! 介護職員が知っておくべき意味と理念

ノーマライゼーションとは「障がいのある人もない人も、住み慣れた地域で、普通に平等に生活できる社会にしていこう」という、福祉において重要な考え方を意味する言葉です。高齢者福祉におけるノーマライゼーションの理念やその歴史など、介護職員として知っておきたいことについて解説します。

 

 

高齢者福祉におけるノーマライゼーションとは

iStock-1160130501.jpg

 

ノーマライゼーションは、社会的な不平等をなくすことを目的とした、スウェーデン発祥の理論です。年齢・性別・人種などの違いや障害の有無などに関係なく、誰もが同じように当たり前の生活や権利が保障された社会環境をつくっていくための理念になっています。

 

厚生労働省もノーマライゼーションを推進しており、障害者福祉に加え、高齢者福祉の基本理念となっています。

高齢者福祉においてのノーマライゼーションとは、高齢者が地域や社会とつながりを持ちながら、自分らしく暮らせることとされます。

これは、病気や障害のある高齢者も他の人たちと同様に、普通に暮らしていくための環境を整えることです。

 

例えば、ある施設の中がバリアフリー化されていれば、歩行が困難になった高齢者が介護職員のサポートや車イスなどを使って、普通に移動できるようになります。

また、重い介護状態であっても1日中ベッドの上で過ごすのではなく、毎日や年間を通して生活リズムを整えながら、その人らしい生き方を追求するのを理想とします。

 

 

日本でのノーマライゼーションの歴史

 

ノーマライゼーションとは1950年代にデンマークで提唱され、その後スウェーデンで発展した、障害者の権利擁護と福祉サービスの向上を目指した福祉理論です。

その後、日本では1981年の「国際障害者年」をきっかけにノーマライゼーションが意識されるようになり、1996年には障害者が自己実現と自己決定の権利を持つことを目指す考え方として取り入れられた「ノーマライゼーション7か年戦略」が政府により策定されました。

この計画のもと、教育・就労・住環境といった分野にわたり、障害者の社会的な自立支援やバリアフリー化の促進など、さまざまな取り組みが関係各省庁の連携によって進められました。

これらの取り組みには数値目標が設定され、ノーマライゼーションを進めるための具体的な枠組みが整ったのです。

その成果として、以前は行政などで措置として行われていた福祉サービスですが、2003年度に導入された支援費制度を利用することで、障害者が自分の意思で事業者を選び、契約できる仕組みへと移行しました。

また、高齢者介護の分野では、これまでは大型の相部屋で老人ホームのような集団ケアを行うことが多かったのですが、個人のプライバシーや生活スタイルを尊重し、少人数単位で個別ケアを行うユニットケアを導入する施設やグループホームといった一般住宅の環境に近づけた介護施設が増えました。

 

 

介護現場ではノーマライゼーションの視点を忘れずに

iStock-1334234134.jpg

 

ノーマライゼーションの考え方では、1日、1週間、1年を通し、ノーマルなリズムやサイクルで生活することが基本原則となります。

ノーマルな1日の生活リズムとは、例えば朝起床したら顔を洗い、身支度を整え、職場や学校に行くといったことです。

ノーマルな1週間のリズムは、平日は仕事や勉強をして、週末は休暇やレジャーを楽しむ、ノーマルな1年のリズムは、祝い事や年中行事をしたり、季節の行事や食べ物を楽しむといったことです。

 

介護現場でも、高齢者が利用する施設やサービスもできるだけノーマルな生活の状態に近づけ、高齢者が自分らしく生活できるようにサポートすることが必要です。

また、ノーマルな生活とは健康的で衛生的なことに加え、外出や自分の時間を楽しむ自由がある生活のことです。

そのようなことから、重い障害があっても朝起きたら着替え、食事は介護スタッフの都合のよい時間ではなく一般的な食事の時間帯に、ベッドではなく食卓でとるといった生活リズムを大事にしている施設は多いでしょう。

 

さらに、曜日ごとに利用者が選べるアクティビティやレクリエーションを企画したり、散歩や外出する時間を設けたり、季節ごとの年中行事や誕生祝いなどの祝い事などを取り入れるなど、ノーマルな1週間のリズムや1年のサイクルをつくる取り組みが多くの介護現場で行われています。

施設によっては地元の人たちによるボランティアを積極的に受け入れ、地域交流イベントの開催など、地域の一員として普通に暮らしていく取り組みを行うケースもみられます。

 

介護施設などで、利用者すべての希望をかなえることはむずかしいですが、高齢者一人ひとりに自己決定の権利があることを忘れてはいけません。

 

介護する側の都合で、画一的なケアを一方的に押しつけないことが大切です。

介護施設の入所者の中には、できれば住み慣れた自宅で暮らしたいと思う人もいるかもしれません。その場合も本人の権利や尊厳を配慮し、できる限りQOLを落とさない介護計画を立てる必要があります。

 

 

利用者が自分らしく生きることを支える

「みんなが同等に普通の生活を送る権利がある」というのがノーマライゼーションの考え方で、現在の高齢者介護の基本理念の根底となるものです。これは、介護が必要な高齢者も地域や社会とつながり、自分らしくいきいきと暮らしていくことであり、介護職員の仕事はそのサポートをすることです。

利用者の自分らしい暮らしを支えることは、利用者本人のQOLの維持向上だけでなく、介護の質の向上にもつながります。

 

 

 

 

関連記事

  個人情報保護方針はこちらをご確認ください