withコロナ時代で加速する介護ロボット導入の補助金最新情報

新型コロナウイルス感染症のまん延により、新しい生活様式への転換が求められています。介護事業の世界でも、ICTを積極的に活用して介護現場でのケアの質の向上や、人材確保、職員の負担軽減、感染リスクの軽減などを目指す動きが加速しています。

ICT化の一環でもある介護ロボットの導入について、厚生労働省では令和3年(2021年)度の予算で、ICT・介護ロボット導入支援(地域医療介護総合確保基金)の枠を 82億円 から137億円に拡大しました。安全・安心な介護サービスを提供できるように、介護ロボットの導入支援を強化しています。

より実用的なものへと進化を続ける介護ロボットの最新情報と、その導入を促す補助金情報をまとめました。

介護ロボットとは?

厚生労働省では、情報感知(センサー系)、判断(知能・制御系)、動作(駆動系)の3つの要素を技術として有し、知能化した機械システム(ロボット)のうち、利用者の自立支援や介護者の負担軽減に役立つ介護機器を介護ロボットと定義しています。

実用の介護ロボットの形状は、大きくは下記のように分類できます。

  • 移乗支援ロボット(装着用パワーアシスト)

介護スタッフが腰や腕に装着する機器で、利用者の移乗時に、抱きかかえる、持ち上げるなどの動作を補助するものです。同ロボットは、利用者を安全に抱きかかえての移乗作業を補助するとともに、介護スタッフの足腰や腕への肉体的な負担やトラブルを軽減します。装着すると、まさにロボット装置をまとうような実感があり、人間の力が安定し、増大します。

  • 移乗・移動支援ロボット(スマートカート)

利用者の歩行や生活動作を支えるための歩行器です。主に屋内用と屋外用の2種類が開発されています。屋内用はベッドからの移動、トイレ使用時のつかまり、立ち上がりなどの動作補助と、ゆっくりとした歩行移動を支える機能がメインです。屋外用は、買い物時の荷物搭載機能のほか、坂道歩行でのモーターアシスト、センサーによる進行速度の抑制などがAIコントロールされ、転倒防止を図っています。また、屋外でのさまざまな道路の形状、環境にも対応するように工夫されています。

  • 排せつ支援ロボット(進化系ポータブルトイレ)

現在、主に製品として実現しているのは、ベッド横に設置するトイレ便器やポータブルトイレです。排せつ後すみやかに便器を自動水洗します。排せつ物を粉砕して下水に直接圧送して排出するため、部屋ににおいも残らず、便器が常に清浄な状態に保たれるというシステムです。今後は、ベッドに寝たきりの利用者の排せつを、ベッド上に直結させたチューブから自動排せつ処理するといった装置も開発・提供されるでしょう。

  • 見守り系ロボット

見守り系ロボットにはさまざまな形態があり、現在介護現場でもっとも活躍している介護ロボットです。次章で詳しく説明します。

介護ロボットを上手に利用するために

介護ロボットの導入が進む一方で、導入後の介護現場では事故が多発しているという調査結果(厚生労働省の委託調査)もあります。事故につながりかねないヒヤリハット事例も多数起きています。

人間の能力を超えた機械の力はときに凶器にもなりえるということを認識し、操作や運用の習熟、十分な安全対策をとることも今後は重要な課題となるでしょう。

民間資格ですが、介護ロボットや介護センサーなどのICT活用の熟練をはかるための資格「スマート介護士」が2019年に創設されました。介護ロボットに対する正しい知識を身に付けるために、参考にしてみるとよいでしょう。

介護の現場でもっとも活躍している見守り系ロボット、そしてマスコットロボット

上述のように、最近の介護ロボットは多種多様になってきています。そのなかで、介護ロボットとして介護施設等でもっとも普及しているのが、AIを活用した見守りセンサー機能を搭載したロボットです。

利用者の居室に見守りカメラを設置するタイプで、顔認証、シルエット認証などで徘徊や離床、トイレの使用などを検知します。介護スタッフのスマートフォンやパソコンに無線LAN経由でリアルタイムに情報が伝達されるため、素早い対応が可能です。特に、人手が少ない夜間の見守りで効果を上げています。

また、マスコットロボットの活用も進んでいます。レクリエーションの司会進行をするロボットのほか、認知症ケアや防止に役立てる機能として、利用者が抱えたり触って話しかけると、その会話内容に適応した絶妙な返事をするロボットもあります。癒し系の外見でかわいい仕草をしてくれるロボットもあり、効果を上げています。

現在、マスコットロボットの機能はさらに高まっています。カメラアイによる利用者個人の認識、バイタルの測定や異常行動の検知、自走移動による利用者の介助機能などの実現に向けて、すでに複合機能を持つ人型介護ロボットとして製品化直前まで来ているのです。

介護ロボット導入補助金・助成金、金融支援情報まとめ

厚生労働省のリーフレット「介護関係者の皆様へ【介護ロボットの導入・活用支援策】のご紹介」から介護ロボット導入支援にかかわる補助金情報を抜粋してお伝えします。

  • 地域医療介護総合確保基金(問合せ先:都道府県庁)

介護事業所に対する業務改善支援事業

    1 第三者が生産性向上の取組を支援するための費用の支援(コンサル経費の補助)(補助上限額1事業所30万円)

    2 「地域のモデル施設育成」に必要と認められる経費の一部を助成(介護現場革新会議の設置に伴う必要経費分は全額補助、介護事業所の取組に必要な経費は上限500万円)

介護ロボット導入支援事業

介護ロボット導入計画の実現のため介護業務の負担軽減や効率化に資するものを対象に導入支援(補助上限額1機器30万円、移乗支援・入浴支援ロボットに関しては補助上限額100万円)、介護ロボット導入に伴う通信環境整備(wi-fi、インカム)(上限750万円)

  •  税制措置

一定の設備を取得や製作などした場合に、固定資産税が3年間にわたって半分に軽減されるという「中小企業の生産性向上のための固定資産税の特例」や「中小企業経営強化税制」などがあります。

  • 金融支援

独立行政法人福祉医療機構による無担保貸付、詳細には介護施設等における介護ロボット・ICTの導入などに伴う無担保貸付制度 (上限額3,000万円)などがあります。

税制措置および金融支援についての詳細は、下記のサイトをご参照ください。

中小企業庁:経営サポート「先端設備等導入制度による支援」

中小企業庁:経営サポート「経営強化法による支援」

都道府県窓口の介護ロボット導入補助金募集例

介護ロボット導入の補助金、助成金の申込窓口となる各都道府県の募集状況は現時点ではどのようになっているのでしょうか? 多くの自治体が2021年7月までには応募を終了していますが、なかには今年度の募集がまだ定まっていなかったり、コロナ禍で対応が遅れていたりするところもあるようです。福岡県、大分県、大阪府、兵庫県、神奈川県(1回目終了、2回目募集開始時期未定)などは、本記事公開の時点でまだ募集もしくは募集準備中です。

各都道府県で対応は異なるため、利用を考える場合には、各自治体へ個別に詳細を直接問い合わせる必要があるでしょう。

実用性が高まってきている介護ロボットを積極的に導入しよう

コロナ禍を機に政府主導の介護ロボット導入が積極化し、補助金の増額や、さまざまな金融支援の種類も豊富になってきています。種々の介護ロボット機器も、研究段階から着々と実用化へ歩みを進めています。介護ロボットの導入には自己負担金も準備する必要がありますが、ぜひこの機会に検討して、貴重な介護人材の確保や業務の負担軽減を推進したいものです。


参考:

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