介護現場の熱中症対策! 高齢者施設で室内熱中症が起きやすい条件とは

熱中症は屋内でも警戒が必要です。熱中症は条件がそろえば誰でも発症する可能性がありますが、高齢者の熱中症は屋内で非常に多く発生しています。利用者とスタッフの健康を守るために、施設内で熱中症が発生しやすい場所や条件を知り、介護現場での熱中症対策の強化を図りましょう。

高齢者の熱中症が最も多く起きる場所は?

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熱中症は炎天下の屋外で起きるイメージがありますが、屋内の方が発生件数は多いことがわかっています。2017年から2022年までの東京消防庁の統計によると、全年齢の熱中症の発生場所は住宅などの居住施設が最も多く全体の41.3%を占めていました。65歳以上のケースでは54.9%が居住施設で発生しています。高齢者の熱中症の半数以上が建物の中で発生しているということです。

また、2018年の熱中症による死者のおよそ80%を65歳以上の高齢者が占めていました。このことから、高齢者の熱中症対策は、まず室内環境に注意することが非常に大切といえます。室内で起きる熱中症のことを室内熱中症といいますが、室内熱中症はどのような状況で発生するのでしょうか?

このような条件の場所では室内熱中症になりやすく、条件が重なるほどリスクが高まります。

1)環境:温度(室温)・湿度が高い、風が通りにくい

2)身体の状態:高齢者、乳幼児、体調不良

3)行動:水分を補給できない、長時間の作業が続くような状況

高齢者は寒暖差を感じにくい、体温の調節機能の低下、体内に蓄積される水分量が少ない、のどの渇きに気づきにくいといったことから、特に熱中症になりやすいといわれています。環境が高温多湿の状態に変化すると、体調に影響して体温が上がり室内熱中症が引き起こされる原因になります。高齢者はこうした環境の変化に影響されやすいため、高齢者特有の身体的な条件に留意するとともに、介護現場では環境を適切に整えることが必要です。

熱中症リスクの高い場所をチェックしよう

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通常、高齢者施設では室温や湿度を管理されていると思いますが、条件によっては温度や湿度が高くなる場所があります。あらためて施設内に熱中症になりやすい状況がないかチェックしましょう。このような場所は室温や湿度が高くなりやすいため、要注意です。

・陽当たりがよい場所:窓の周辺、サンルームなど

・熱が発生する場所:浴室、ランドリールーム、調理室、厨房など

・せまいスペース:エレベーター内、トイレなど

・閉め切られたスペース:倉庫、備品室など

・その他、エアコンのない場所

このうち、まず対策したいのが窓のある陽当たりのよい場所です。夏場に室内の気温が高くなる原因の多くは窓から差し込む太陽光です。窓周辺に遮熱をすることで有効な熱中症対策になります。具体的には、室内でできる対策としては遮光タイプのカーテンやブラインドを設置する、窓に断熱シートを貼るなどの方法があります。室外からもすだれやよしず、シェードなど日差しを遮るものを設置するなど、室内外の対策を組み合わせることで、より効率よく熱が入ってくるのを防げます。

陽の当たらない場所や窓のない場所でも、上記の条件がある場所では室温・湿度が高くなりがちです。こうした場所には温湿度計を設置し、換気扇や扇風機、除湿器などを活用して風通しをよくする工夫をしましょう。また、共用のリビングルームなどの広い部屋では全体的に冷房を入れていても、窓の近くは温度が高くなっていることもあります。そのような場所では複数箇所に温湿度計を設置して、温度・湿度を確認しながら、エアコンの風向きに注意し扇風機やサーキュレーターを使用するなど風を回して部屋全体の温度を均等にすることが大事です。

浴室はどうしても温度が高くなる場所ですが、利用者の入浴の前後にじゅうぶんな水分補給をうながしましょう。大量に汗をかいているときは水だけでなく塩分補給も必要です。入浴中はお湯が熱くなりすぎないよう気をつけ、換気も必ず行います。

介護スタッフの健康にも配慮を

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熱中症になりにくいよう介護現場の環境を整えることは、利用者だけでなくスタッフの健康にとってもメリットがあります。ただし、その上で注意したいのが熱中症になる要因として、利用者である高齢者と若い世代のスタッフでは少し条件が異なるという点です。

高齢者は身体的な要因が大きいですが、これに対し、若い世代の熱中症では行動が要因になることが多いといわれています。例えば、気温の高い環境で長時間作業を続けたり、水分補給をしないでいるといったことです。また、さほど気温が高くなくても、心身の疲労がたまっているのにムリをして働くといったことも、熱中症リスクにつながります。

スタッフの熱中症対策の基本は、こまめに水分をとる、じゅうぶんな休養、栄養バランスのよい食事など高齢者の場合と多くは共通します。加えて、介護現場で定期的に水分補給の時間を設ける、熱中症リスクの高い環境ではできるだけ短時間のシフトにする、体調の異変や疲れを感じたら早めに休めるようにする、といった環境づくりが重要になるでしょう。

利用者・スタッフ双方への熱中症対策になる環境づくりを

介護現場では、利用者の熱中症を防ぐことはもちろんですが、介護サービスを提供するスタッフの健康への配慮も必要です。スタッフの体調不良は利用者の安全を脅かすことにつながります。施設内での環境的な熱中症リスクを排除することは、利用者、スタッフ双方にとって有効な対策になります。その上で、高齢者と介護スタッフのリスク要因に注意し、介護現場での熱中症対策を強化していきましょう。

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