糖尿病や動脈硬化を招くオーラルフレイルとは? フレイル対策にはお口の健康が大切

オーラルフレイルとは口腔機能の衰えによって心身が悪影響を及ぼされた状態をいいます。オーラルフレイルは生活習慣病のリスクを高める原因となることに加え、高齢者にとって要注意なフレイル(弱った状態)の入口になるともいわれています。オーラルフレイルが高齢者の健康にどんな影響を与えるのか解説し、その対策をご紹介します。

 

お口の健康が全身に影響する? オーラルフレイルとは

近年、歯周病が糖尿病などの原因になるなど、お口の健康が全身に影響を及ぼすことがわかってきました。食べることをはじめとして、口には多くの機能が備わっていますが、歯を失ったり口の周囲にある筋力が衰えたりすることで、口腔機能が低下した状態をオーラル(口腔の)フレイルといいます。オーラルフレイルは全身の健康や生活の質(QOL)に深く関わることが知られるようになってきましたが、高齢者の場合、特に注意したいのがフレイルとの関係です。フレイルは虚弱ともいわれますが、老化によって心身や筋力が衰えた、要介護一歩手前の状態を指します。オーラルフレイルはフレイルの初期段階に見られ、老化のサインともいわれています。

 

お口の健康の低下と生活習慣病やフレイルの関係

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歯を失ったままの状態を放置していたり、舌や口の周囲の筋力が弱くなったりすると、しっかり噛んで食べることができなくなってしまいます。これでは十分に栄養を取ることができず、筋肉量や体力が低下してフレイルへとつながり、積極的に人と話す機会も減っていく可能性があります。口の機能が衰えると会話がしづらくなり、言葉を発するのがおっくうになることも。外出や人と話す機会が少なくなるのは、社会とのかかわりが減るということですから、生活の質を低下させることにもなります。

歯を失う原因になる歯周病は糖尿病や動脈硬化、心臓病といった生活習慣病と大きく関わることが明らかになっています。

また、糖尿病は血液に含まれるブドウ糖(血糖)の濃度が継続的に高くなって全身の血管が傷つき、腎臓や目の網膜など様々な臓器・器官がダメージを受ける病気です。健康な状態であればインスリンによって血糖値がコントロールされますが、歯周病が重症化するとTNF-αという物質の発生が増えます。TNF-αは過剰に増えるとインスリンの働きを妨げ、糖尿病を悪化させる要因にもなります。

また、歯周病の原因となる細菌が血液中に入り、心臓に感染を起こすケースもあります。感染性心内膜炎は心臓の壁や弁などに細菌が付着することで感染して起きる病気ですが、その原因はほとんどが口腔内の菌といわれています。さらに、心臓をとりまく冠動脈に感染が起こると、歯周病の原因菌がプラークと呼ばれる細菌の塊を動脈の中で作ります。プラークが溜まると血管の壁が厚くなり、血管そのものも狭くなります。これがいわゆる動脈硬化という状態です。動脈硬化は狭心症や心筋梗塞の発症を招きます。

このように、オーラルフレイルは全身の健康だけでなくQOLにも大きく影響するのです。歯周病が悪化すると生活習慣病のリスクも高まります。逆に口腔内の清潔を保ち、歯周病の治療をすれば、健康トラブルの予防になり、悪化を防ぐこともできます。

 

オーラルフレイルのチェックと対策の基本

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高齢者が健康とQOLを維持することは、健康寿命を伸ばすことでもあります。フレイル予防はそのために欠かせませんが、オーラルフレイル対策はそのカギといえるでしょう。なるべく早い段階でフレイルの入口であるオーラルフレイルに気づいて対策を講じることで、より効果的にフレイルへの進行を遅らせることができます。ここでは、オーラルフレイルのサインと対策の基本をご紹介します。

 

<オーラルフレイルのサイン>

このような症状が見られる場合は、オーラルフレイルの可能性があります。

・会話がしづらい

・飲み込みにくくなった

・むせることが多くなった

・食べこぼしをするようになった

・かたいものが噛めない

 

<オーラルフレイル対策の基本>

・口の中を清潔に保つ

歯をなくすとオーラルフレイルの可能性が高まります。また、口内の汚れは肺炎の原因にもなります。歯を失うことで食物残さなどの危険が増し、唾液とともに口腔内の細菌が気管支や肺に入り込むと、肺炎を発症する危険性が高まります。口の中を清潔に保ち、歯の欠損や肺炎を防ぎましょう。

 

・食べるための機能を保つ

栄養をきちんと摂るためには、歯の欠損につながる虫歯や歯周病にならないことが大切です。虫歯・歯周病の予防には定期的な歯科健診がおすすめです。欠損した歯があればブリッジや義歯などで補いましょう。

 

・口の中を保湿する

唾液が減ると口内に汚れや細菌が溜まりやすくなったり、食べ物をスムーズに飲み込めなくなったりします。唾液がよく出るように普段からよく口を動かす、食事をする時はよく噛んで食べることなどを心がけ、口腔ジェルのような保湿剤で口の中を潤すようにしましょう。

 

・口腔トレーニングを習慣づける

本の音読、歌を歌う、早口言葉、会話をするなど、普段から意識して口とその周囲の筋肉をよく動かすことが大切です。また、オーラルフレイルを予防するための様々な口腔トレーニングがあるので、日常生活でも食事の前に行うなど習慣づけるようにしましょう。

*口腔トレーニングについては、こちらの記事もご覧ください。

https://www.dearest-partners.jp/1137/

 

オーラルフレイル対策で利用者のQOL向上を

オーラルフレイルは老化のサインでもあることから、その対策を実践することは健康寿命を伸ばすことやQOLの向上にもつながります。対策のひとつである口腔トレーニングは食事の前後だけでなく、レクリエーションなどのアクティビティに取り入れるのもおすすめです。

■ストローを使ったレクリエーションの事例
①ストローダーツ
ストローダーツはポピュラーなレクリエーションの一つです。例えばストローの先に鉛筆サックのような弾を付けて、的に向けて吹き飛ばすなど、身近な安全なものを使って行いましょう。吹き矢はスポーツとして高齢者に親しまれ、レクリエーション協会として活動しているところもあります。口腔ケアだけでなく、脳の活性化やストレス解消にも役立ちます。

②モール送り
先折れ型のストローを使い、口に咥えたストローの先に輪ゴムをひっかけます。手を使わずに口に咥えたストローだけで、その輪ゴムを参加者の間で次々にリレーしていくゲームです。口を閉じる力をつけ、食べこぼさないように訓練することができます。

施設では利用者さんが楽しく参加できるようなプログラムにすれば、トレーニングそのものがQOLの向上に役立ちます。利用者さんが楽しみながらオーラルフレイルを予防できるように工夫していきましょう。

 

 

 

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