介護業界に外国人の受入れ本格化。外国人介護士の働きぶりとその実態とは

近年、介護施設に視察として訪れる多くの外国人。みなさんも自分の施設で、見学している外国人の姿を見たことがあるのではないでしょうか。

2008年以降、インドネシアやフィリピン、ベトナムと随時結ばれた経済連携協定によって、外国人介護福祉士候補者の受入れが始まりました。2016年には外国人研修生の受入れが本格化し、介護業界も国際化してきています。そこで、実際に外国人を受入れている施設に着目し、外国人介護士の実態を探ります。

外国人が介護業界で働くまでの道のりとは?

日本ではさまざまな協定に基づき、インドネシア、フィリピン、ベトナム人の介護業界での受入れを厚生労働省主体の下で実施しており、厚労省によると2016年(平成28年度)9月1日現在の累計受入れ人数は3国あわせて3800人を超えました。受入れ人数の最大数は年ごとに決まっています。

来日する条件として、母国で介護士の認定を受けているか、看護学校を卒業しているかどうかに加え、ある一定の日本語能力があるかどうかも条件となります。日本語能力は国によって条件が異なり、ベトナム人は日本語能力検定N3、インドネシアとフィリピンはN5という最も簡単で日常会話レベル以下の日本語能力で来日することができます。

これらの条件を満たした外国人は特定活動として来日し、一定期間日本語研修を受けた後、提携している施設へ配属されます。その後4年間施設で働き、4年目の年に介護福祉士の国家試験を受けます。ここで合格すれば日本に永住し介護福祉士として働き続けることができます。もしも不合格の場合は、1年間だけ追加で留まり、国家試験を受けることができますが、そこで不合格の場合は帰国という流れになります。

国家試験の合格率は、2015年度で約50%となっています。

外国人介護士に対して賛否両論ある理由とは?

少し古いデータになりますが、内閣府が2000年に20歳以上の男女を対象に行った「外国人労働者問題に関する意識調査」によると、受入れを認めないとする者の割合が48.3%(「受入れを認めない」17.0%+「どちらかといえば受入れを認めない」31.3%)、「受入れを認める」とする者の割合が42.8%(「どちらかといえば受入れを認める」31.9%+「受入れを認める」10.9%)となります。理由としては「介護には日本語でのコミュニケーション能力が必要である」が69.5%、次に「介護サービスは日常生活全般にわたることから、国内の各種制度や生活習慣を理解する必要がある」が58.0%、「介護には専門的な知識及び技術が必要である」が38.3%、「外国人を受入れれば日本人の雇用機会を奪うことになる」が18.3%となっています。

また、国際移住機関が2004年に行った外国人労働者の受入れの課題と展望を示すディスカッションでは、明治大正生まれでは相手が日本人であっても、生活に他人が介入することに抵抗があるのに、まして外国人では難しいのではないかという意見がありました。そのほかには、「介護は心があればできるから国籍は関係ない」、「今の若い日本人でも言葉の通じない非常識な子はいるから、国を越えてきている外国人の方がよっぽど働いてくれる」、「介護士が永住し年をとった場合、外国人に対する年金や介護サービスの負担がかかるのではないか」、「介護される側は戦争経験者が多いため、外国人からの介護は受入れたくないのでは?」という意見もありました。賛同する意見よりも否定的な意見のほうが多いのが現状のようです。

実際に外国人介護士を受入れると?

一般社団法人外国人看護師・介護福祉士支援協議会が実際に外国人介護福祉士を受入れた施設に対して2015年にアンケート調査を行い、データを出しているのでご紹介します。

外国人介護士を受入れた施設の約6割が特別養護老人ホーム、約2割が老人介護保健施設、残りが病院と障がい者施設になります。受入れの理由としては人材確保、将来のための人材育成が最も多く、次いで国際親善のためという理由となります。

実際に受入れてみると、「満足」「どちらかといえば満足」がそれぞれ約2割、約4割、「どちらともいえない」が約2割という結果となりました。日本語に対して不安を抱く意見があがっています。また、「国籍問わずどの外国人もやる気がある人は日本人以上によく働いてくれた」、「試験に落ちても永住してほしいと思った」という意見もあるなか、「あと数年で帰国すると口にされ、指導するスタッフのモチベーションが下がった」という意見もありました。

「外国人」というよりも、ひとりの人として

外国人の永住率が諸外国から見ても少ない日本では、1人の外国人の行動や態度がすべての外国人とイコールでつながってしまい、1人の悪い評価はその人の出身国の評価になってしまいがちです。しかし、外国人であるかどうかではなく、それぞれの人のやる気や能力、性格に負うところが大きいことを念頭に置いておくべきでしょう。外国人介護士に対しても、日本人と同様に1人の「研修に来た介護士」として向き合うことができれば、日本人介護士と同等、あるいはそれ以上に活躍してくれるのではないでしょうか。今後、外国人介護士が日本でどのように活躍するか、今後の展開に注目です。


参考:

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