注目を浴びる介護スタッフの医療的ケア「喀痰吸引等」

高齢になると、一般的にいままでは無意識にできた動作ができにくくなってきます。立ちあがったり、歩いたりするなどのADLに支障が出てくるとともに、ものを飲み込む動作である嚥下(えんげ)する能力も低下します。本来であれば、気道にたまったに痰は咳払いなどで容易に飲み込んでしまえるのですが、それができなくなると、窒息や呼吸障害を起こします。そのため、体力が衰えてきた高齢者には、たまった痰を取り除く医療的なケアが必要になってくるのです。

「喀痰吸引(かくたんきゅういん)」は、のどにたまった痰を吸いだすなどの医療的なケアのことであり、「喀痰吸引等」は、「口腔内の喀痰吸引」「鼻腔内の喀痰吸引」「気管カニューレ内部の喀痰吸引」「胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養」「経鼻経管栄養」の5項目に関する医療行為を指します。

「喀痰吸引」は近年、医師の指示にしたがって介護スタッフが行えるようになりました。介護施設などでは医師、看護師などの手が回らないことがあり、特に夜間に介護スタッフが喀痰吸引などの医療的なケアをできる体制が望まれていたため、制度改革によって介護スタッフの「喀痰吸引等」のスキルが、がぜん注目を浴びています。

介護スタッフが「喀痰吸引等」ができるようになるには?

介護の現場でこれまではおもに看護師が喀痰吸引等を行ってきましたが、平成24年度から介護福祉士および一定の研修を受けた介護職員等が「痰の吸引」「経管栄養」等の行為を施設や居宅において実施できるようになりました。

喀痰吸引の認定証(実地研修で得られる資格)には1号から3号があり、1号は不特定多数の者に対して前述の5項目の行為がすべて実施でき、2号は任意に各項目別の実施研修を修了した者に与えられ、3号は重度障害者などの特定の利用者への実施を前提とした認定証です。

講習受講と喀痰吸引の実地研修が必要

喀痰吸引等の行為ができるようになるためには、平成28年度から介護福祉士への道のりのひとつになった、実務者研修のカリキュラムに組み込まれている「医療的ケア」の講習を受けるか、あるいは別に50時間の喀痰吸引等研修を受講し、その後、双方ともさらに所定の実地研修を行うことが必要です。

その実地研修の回数は、ほとんどの人が取得を目指す1号、2号の場合、口腔内喀痰吸引10回以上、鼻腔内喀痰吸引20回以上、胃ろう・腸ろうの経管栄養を20回以上、経鼻経管栄養20回以上と長期間に及びます。これは、喀痰吸引等の行為が技術的に非常に難しく、失敗が利用者の生命のリスクに直結するものであるということを物語っています。ですので、喀痰吸引等はもともと医者のみに許された医療行為という認識を忘れずに、しっかり現場の研修を受けて万全のスキルを習得することが大切です。

プラスαのキャリアとして注目の「喀痰吸引等」

就職や転職時などのプラスαのアピールポイントになりつつある喀痰吸引等の資格。現在、介護福祉士の資格取得時に喀痰吸引等の資格もぜひ取得しておきたいという人、また、すでに介護福祉士である介護スタッフのなかでも、新たにこの喀痰吸引等研修の50時間の講習を受講する人が増加中とのことです。

経営層からの視点でも喀痰吸引等の資格は脚光を浴びており、現在、喀痰吸引等を行えるという登録をする事業所は増加傾向にあるようです。他施設との差別化のためにも、あるいは後れを取らないためにも、喀痰吸引等の資格をもった介護スタッフを確保する、あるいは自施設の介護スタッフの資格取得を奨励し、サポートする戦略を推進して行くべきかもしれません。

  

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