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国際比較から見る日本の介護事情
現在の日本の介護は、介護保険制度をベースとした手厚いケアが中心となっています。しかし、介護は国ごとに制度や思想が違うため、介護スタイルにはさまざまな違いがあるのです。今回は、日本の介護事情を海外の国と比較してみましょう。
日本の介護にはどんな特徴がある?
最初に、日本の介護事情についておさらいしてみましょう。日本では介護保険制度をベースとして、手厚くケアをするスタイルをとっています。サービスの質にこだわる施設が多いといえるでしょう。
老人ホームの種類を大きく分けると、民間企業が運営する施設(有料老人ホームやグループホーム)と介護保険が使える公的施設(特別養護老人ホームなど)の2タイプに分類することができます。
老人ホームの種類だけでなく、サービスの幅も広いことも特徴のひとつでしょう。長期にわたる入居サービスだけでなく、日帰りで施設を利用できる通所介護や、在宅で介護サービスが受けられる訪問介護などもよく利用されています。
現状の問題点としては、高齢化社会による職員の人手不足・賃金の低さ・離職率の高さなどが挙げられるでしょう。
これらは介護に関してのよく耳にする情報ですが、あくまで「日本における特徴」です。世界には日本とは違うスタイルで介護を行っている国が数多く存在します。スウェーデン、イギリス、ドイツの介護スタイルをもとに、海外と日本の介護事情を比較してみましょう。
国際比較(1)スウェーデンの介護スタイル
まずはスウェーデンの介護スタイルから見ていきましょう。
- 地方自治体が介護サービスを提供
- 原則的に在宅ケアが中心
- 在宅やサービスハウスなど、施設の連携がとれている
福祉国家として有名なスウェーデン。介護における先進国ともいわれています。在宅ケアを中心とし、高齢者向けのサービスには自立生活を支援するものが多く見られます。つまり、周囲の人たちが高齢者の世話をするのではなく、本人が生活に必要なものを最優先に考慮して提供するという「生活援助」をサービスの目的としています。
また、在宅と老人ホームの連係がとれているため、必要に応じて場所を移動できるという点も、大きな特徴になります。ただし、ケア付きの施設に入居できるのは「在宅での生活が困難になった高齢者」であるため、国民からは不満の声も上がっています。
国際比較(2)イギリスの介護スタイル
次に、イギリスの介護スタイルについて見てみましょう。「揺りかごから墓場まで」という有名な社会福祉政策のスローガンは、第二次世界大戦後にイギリスが掲げたものであり、より良い社会福祉の実現にむけて努力してきました。
- 介護休業制度がない
- 地方自治体が介護サービスを提供
- 在宅ケアが中心
- 企業が介護と仕事の両立支援を行っている
- 企業の活動を民間団体が支援している
イギリスもスウェーデンと同様に、在宅ケアを中心としています。「自宅での生活を続けたい」という考え方を持った高齢者が多く、介護サービスの内容についても、高齢者の生活援助を目的としたものが多く見られます。
また、民間団体の支援を受けながら企業が介護と仕事の両立を推進しているという点も特徴的でしょう。
国際比較(3)ドイツの介護スタイル
最後に、ドイツのスタイルについて見てみましょう。
- 介護保険制度がベース
- 介護休業制度がある
- 2015年に「改正家族介護時間法」が施工される
ドイツでは、介護が必要な高齢者のうち7割が在宅ケアを受けており、要介護者のうち5割は介護者が家族のみという状況です。2015年には「改正家族介護時間法」が施工され、家族介護時間の義務化が行われたものの、介護時間と家族時間の最長利用期間は従来の通算期間より短いものとなりました。
生活援助が介護サービスの原則
国によって、介護スタイルには違いがあります。スウェーデンやイギリスのような介護先進国では、周囲の手厚いケアよりも、高齢者が自分らしく生活するための支援がサービスの基本となっています。あえて手をかけず、高齢者の自尊心を重視するという手法もひとつのあり方でしょう。
また、ドイツ・イギリスについては仕事と介護を両立するための取り組みが行われています。同じ状態の高齢者でも、国が違えば高齢者のライフスタイルにもこれだけの差が出るのです。これを機に、あなた自身が普段行っている介護を振り返ってみませんか?
参考:
- 厚生労働省|諸外国における介護保障制度の比較
- 厚生労働省|イギリス・ドイツにおける仕事と介護の両立支援
- 福祉国家スウェーデンの高齢者住宅・介護事情