ウェアラブルデバイスを活用した見守り介護について考える

近年、介護業界への導入が目覚ましいウェアラブルデバイス。今回は、ウェアラブルサービスの市場動向の資料をもとに、ウェアラブルデバイスを見守り介護に活用していくことについて考察していきます。

ウェアラブルデバイスを活用した見守り介護の現状は?

まずは、2014年に発表されたTECHNO SYSTEMS RESEARCHのデータをもとに、ウェアラブルデバイスを活用した見守り介護の現状と今後の可能性を見てみましょう。

日本の現状

ウェアラブルデバイスは2013年より需要が拡大し、2015年にApple Watchが発売されたことを受けてそのブームは継続しています。このブームに乗り、ウェアラブルデバイスの市場では個人だけでなく事業者をもターゲットとするようになりました。特に2016年以降は、介護分野での市場の伸長が見込まれており、見守り介護に利用されるウェアラブルヘルスモニタリングデバイスの市場は2013年から2018年で約40%の成長が予測されています。

その一方で、日本でのウェアラブルデバイスを使用した見守り介護の現状は、警備会社が富裕層向けに展開するサービスという位置づけとなっています。公的介護サービスでは財源が厳しいため機器の購入が容易ではないということが理由となっており、地方自治体レベルではまだ限定的な取り組みにとどまっています。

また、主要サービスプロバイダー各社のウェアラブル機器への対応率も2014年時点で8%と低く、このことから、今後のウェアラブルデバイスを使用した見守り介護の普及の可能性は低いという見方もあります。

海外の現状

現在、ウェアラブルデバイスを使用した見守り介護が最も普及しているのはアメリカです。

また、独居高齢者の多いフランスや、今後5年間で遠隔介護、医療における世界トップの地位を目指すイギリス、高齢者向けの住居施設が充実しているスウェーデンでは、国や自治体をあげてウェアラブルデバイスを使用した見守り介護を導入しています。

わが国でも、ウェアラブルデバイスの見守り介護への活用には、国や自治体をあげての動きが必要かもしれません。

ウェアラブルデバイスを活用した見守り介護の可能性

ウェアラブルデバイスを活用した見守り介護は、現在ではまだ事例が少ないようですが、今後、期待したい活用方法です。その一例を、日本電信電話株式会社の資料から紹介しましょう。

バイタルサインの情報を活用した見守り介護

高齢者介護や見守り、安否確認、生活支援のためのサービスを下支えすることを目標に考えられているのが、バイタルサインなどの情報を取得するセンサー付きのウェアラブルデバイス。特別なコーティングが施されたシャツを着て、腕時計のような機器を装着するだけで心拍や心電図が連続計測されるというものです。これらの情報を活用することで、介護者の負担減、高齢者の安全、健康増進を実現する新たな介護サービスへつなげていくことができるようになります。現在はまだ研究の段階であり、世には出ていませんが、新たなサービスとして今後注目されます。

ウェアラブルデバイスを活用した見守り介護のメリット・デメリット

メリットはやはり、離れたところに住んでいたり、自分の目の届かないところにいたりする高齢者の安否や健康状態を速やかに確認できるということです。これは、在宅で生活し介護を必要とする高齢者だけでなく、介護付き高齢者住宅や有料老人ホームでも、介護士の負担を軽減しながら利用者の安全を守ることができる画期的な策となるのではないでしょうか。

デメリットとしては、費用、そしてサービスの質の問題があげられます。対応できるサービスプロバイダーが少ないこと、プロバイダーによってサービスの質が異なってくることから、ウェアラブルデバイスを使用する際には慎重に選択することが必要となるでしょう。

今後、日本での普及に注目

日本でのウェアラブルデバイスの使用は海外と比べるとまだまだ少ないのが現状です。ウェアラブルデバイス市場はこれから数年でさらに成長していくことが予測されており、介護分野へ応用できるウェアラブルデバイスの開発や、市場への導入を加速するような法令の改正などに注目していきたいものです。

介護業務の電子化による業務改善事例については、こちらでも紹介しています。
記録を変えれば、介護が変わる!業務改善ガイドブック 

参考:

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