介護施設における感染予防対策まとめ

多くの入所者や通所者が基礎疾患を持つ介護施設において、新型コロナウイルスに代表される感染症の予防対策は、いまや最重要の衛生管理業務です。感染症流行時の緊急対応のみならず、常時から対策を施す必要性が認識されはじめています。多くの高齢者が集団で生活する、介護施設における感染予防対策をわかりやすく解説します。

誰が施設にウイルスを持ち込むのか?

高齢の施設利用者は活動や行動の範囲が狭いうえ、人との接触も少なく、ウイルス感染や保有、持ち込みの可能性は低いといわれています。

そのような状況下でもっとも注意すべきなのは、介護スタッフや訪問者による外部からの持ち込みです。

現在、家族との面会に関しては、タブレットを活用したオンライン面会が積極導入されています。実際の面会時も、検温や消毒、フェイスシールドの着用などの接触リスク防止策が周知徹底されています。

生活の場が施設以外にある介護スタッフによる、施設内へのウイルス持ち込みが重要な感染要因と考えられているため、今後はこの点を重視した対策を施す必要があるでしょう。

施設での瀬戸際対策とは?

新型コロナウイルスの流行を機に、家族との面会には、オンライン面会の導入や面会室を準備するなどの感染予防対策がとられています。一方で、外部からの訪問者には、訪問診療、看護、訪問リハビリ、訪問マッサージや理美容などもあります。そのような介護関連スタッフによる入居者居室への立ち入りを極力避けるため、専用の診察室やリハビリ室を準備しているところが多いようです。

感染対策上、かなめになるのがケアマネージャーです。例えば、リハビリは利用者の体調の回復を図る重要なメニューであるため、継続する前提で感染対策に取り組まなくてはいけません。ケアマネージャーには、利用者および外部の介護スタッフから不安点や要望を聞き取り、双方が納得できる感染防止対応を、施設の状況に合わせて設定することが求められます。

介護施設がスタッフのために行うべき感染予防策

介護スタッフが勤務先の施設で感染したり、感染を広げたりする事態は絶対に避けなければなりません。そこで、利用者に対してだけではなく、自施設のスタッフのためにも感染予防策をとることは非常に重要です。

いくつか対策を見てみましょう。

  • フロントの受付窓口やスタッフルームのパーティションに透明のアクリル板を設置する。
  • 出勤人数の調整(グループ分け就業)、時差出勤、オンライン会議を導入する。
  • 1日数回の換気、共用する備品の消毒を徹底する。
  • 感染症流行時には、私用の外出を控えるように全スタッフに要請する。
  • スタッフ専用の体調確認ノートやオンライン上で健康管理ページを作成し、勤務前の体調管理記録を定着させる。
  • 就業前には体調に問題がない場合でも、夜勤や長時間の勤務中に体調が変化する可能性を認識しておく。管理者やリーダーは、スタッフの発熱や風邪症状などの体調不良に日ごろから気を配る。

介護施設の現場は常に人手不足であり、シフトに余裕がないことから、体調不良であってもなかなか休めない状況、休みたいと申し出にくい状況にあります。そこで、体調不良時には遠慮せず報告できる環境と、休まざるをえないスタッフに親身な対応をする雰囲気を、施設長を筆頭に事業所全体がつくりだすことが必要です。

体調不良の際は報告・相談しやすいように、LINEのようなSNSを活用したスタッフ体調確認専用のグループ連絡網を作成するとよいでしょう。また、休むことの重要性をすべてのスタッフが理解するよう教育するほか、緊急時の代替要員を常に確保しておくなど、さまざまな対策をとることが重要です。

介護施設の毎日の感染予防

スタッフに対する予防対策と重なる部分がありますが、介護施設全体の予防対策についても確認しておきましょう。

  • 個人防護具使用の徹底

特に排せつ物、体液・汚物などの処理をする際の着用を必須とする。現場に不慣れな新人スタッフが、防護具をつけずに処理にあたることがないように注意する。また、使用ずみ個人防護具は必ず廃棄し、防護具の備蓄量にも気を配る。

  • 手指衛生の励行
  • 誰にでも瞬時に検温できるサーモセンサーの導入
  • 定期的な換気(1時間に1回10分間程度)

2か所以上の窓を開け、風が室内をしっかりと流れるように施設の空間の特徴を把握し、状況に合わせて開閉を工夫するとよい。

  • 環境・器材消毒 

頻繁に手でさわるドアノブやベッド柵、トイレのドア、便器まわり、床などは利用ごとに塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム希釈液)で消毒する。

  • 配膳と給食、リネン管理

体調不良者、発熱者、検査中の利用者は個室で食事をする。スタッフも食事をとる際には同様に換気やソーシャルディスタンスに十分注意し、ほかのスタッフと時間や空間を分けるなどの工夫をする。食器やリネン類は熱湯消毒を必ず行う。タオル類の共有はもちろん避ける。

 

感染症流行時だけではなく、日ごろから以上のような衛生管理をしっかりと行うことが、今後さらに重要となるでしょう。

感染症流行時にしっかりと対応できる準備を

高齢者への感染対策は十分すぎることはありません。利用者のフレイル(虚弱)にも注意が必要であるため、感染流行時でも、リクレーションやリハビリなどを、換気とソーシャルディスタンスを維持したうえで行えるように、施設で工夫をしていきたいものです。

感染症流行時に利用者に疑わしき症状が見られたら、介護施設所属の看護師が中心となり、対応マニュアルに沿って、24時間体制のかかりつけ医と連携し、冷静に対応していかねばなりません。そこで、事前に関係各所と相談した対応マニュアルを作成しておく必要があります。また、新型コロナウイルスのような大型の感染症の流行にも対応できるよう、緊急時の対応について地域の人々や他施設と協議しておくことも重要です。

さらに、地域の流行状況を常に把握して最新情報を日々収集し、平常時から行政や提携医療機関、保健所などとの連絡体制を確立することもまた、早急に望まれています。


参考:

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