ICTで常時監視!介護施設の最新熱中症対策

地球温暖化の影響で、日本の気候は年を経るごとに酷暑の傾向が強くなっています。今年の夏は特に、新型コロナウイルス感染症対策としてマスク着用が推奨されていたため、高齢者の熱中症リスクが高まり、多くの人が救急搬送されました。

そもそも、なぜ高齢者は熱中症になりやすいのでしょうか? まず、加齢にともなって心身の新陳代謝が低下し、暑さ寒さや水分不足に鈍感になっていることが挙げられます。いまや夏に自宅でエアコンを使わない生活は、命に危険がおよびかねません。また、「冷房は電気代がかかる」、「寒くなりすぎてしまう」というように、長時間のエアコン利用に対して否定的な感情をもつ高齢者が多いことも理由に挙げられます。さらに、基礎疾患のある人は利尿剤の服用で体の水分、塩分バランスが崩れ、脱水状態になってしまう場合があるのです。

高齢の利用者を24時間見守る介護施設の場合でも、さまざまな時間帯で、あらゆる場所に熱中症リスクが潜み、限られた介護スタッフだけでは目の届かない場合が多々あります。

介護施設における熱中症対策として、ICTの導入・活用によりできる、よりきめ細かい対応を紹介します。 

介護施設での熱中症予防の基本とは?

高齢の利用者が日常生活を営む介護施設において、まず、基本的な熱中症対策としてどのようなことが必要でしょうか?

  1. 継続的かつ計画的な水分補給:起床時、入浴終了時、就寝前にお茶を1杯飲むといった習慣をつけて計画的に摂取し、その量を記録する。
  2. 利用者ごとに快適なエアコン環境を常時調整:28℃の温度設定にこだわらずに利用者の体調や好みにあわせこまめに調整する。風の吹き出しの風量や向きにも配慮し、湿度も高くならないように確認する。
  3. 外出先からの帰宅時や入浴後は要注意:短時間でも炎天下での行動は危険性が高いため、体調、様子をよく観察する。また、入浴直後は血圧が乱高下しやすく、脱水状態を起こす可能性もあるので、できるだけ早く水分摂取を促し、様子を観察する。

介護現場で活用して熱中症対策ができるICT導入

介護人材不足の昨今、施設運営におけるICTの導入は喫緊の課題です。利用者のプライバシーや居住性を守りながら日常的なバイタルや行動を見守るために、以下のような最新のシステムが導入されはじめています。

  • エアコンみまもりサービス(パナソニック)

パナソニックが提供する「エアコンみまもりサービス」は、エアコンと非接触センサーを組み合わせることによって、利用者のプライバシーに配慮しながら居室のエアコン情報と生活動作の情報を把握します。以下のような特徴があり、24時間対応で介護スタッフの負担軽減を図ることができます。

  • 各居室の温度・湿度を24時間一括管理でき、エアコンの遠隔操作も可能。異常時は所定の緊急コールへ通知する。
  • 不穏な異常行動をすぐに感知できるため、通常では把握が難しい起床や入眠の時間、夜中の高頻度の目覚めなどを知ることができる。昼夜逆転や不眠による体調変化が把握しやすくなり、個々の利用者の状況に沿った熱中症予防対策が可能。
  • 見守り支援システム「いまイルモ」(株式会社ソルクシーズ)

複数のセンサーで生活状況を把握、時系列で24時間サポートを提供するサービスです。設置も簡単で、

見守る相手のプライバシーを尊重しながら、パソコンやタブレット、スマートフォンでの確認が可能です。

さらに、異常時のコールシステム(施設の管理システム)と連動させることによって、24時間リアルタイムで以下のようなことが可能です。

  • 温度センサーで事前に設定した温度の上下限を超えた場合、リアルタイムに介護スタッフへ通知(熱中症、高血圧対策に有効)。
  • カメラを使わないモーションセンサーによって利用者の動作情報や、心拍、呼吸などのバイタル情報(オプション)を感知。居室での異常を感知した場合、すみやかに通知(心筋梗塞や徘徊などの早期発見にもつながる)。
  • トイレ回数の表示も可能で、さまざまなデータを介護記録やケアプラン作成に活用できる。 

もしも利用者が熱中症になってしまったら

熱中症は残暑の厳しい9月以降も発生します。秋めいてきても真夏日に戻る日も多く、9月に入っても油断は禁物です。

  1. 利用者の様子がおかしかったら、まずは意識の有無を確認します 。「反応に違和感がある」「言葉がもつれる」など、ふだんと異なる場合には迅速な対応が求められます。
  2. 室内の涼しい場所、よく冷房の効いた場所に寝かせ、着衣をゆるめ、体のこもり熱を逃がすようにします。保冷材でわきの下や首、鼠径部(そけいぶ)など太い血管やリンパ管が通っている部位を冷やしましょう。
  3. スポーツドリンクや経口補水液などを摂取させます。ただし、吐き気や嘔吐がある場合は、誤嚥による窒息予防のため水分摂取を避け、上半身を起こして様子を見ましょう。
  4. すみやかに救急搬送を要請します。高齢者の熱中症は時間とのたたかいであることを念頭におき、原則的には居合わせたスタッフがすぐに救急に連絡するといった手はずを整えておきましょう。 

施設の熱中症対策は介護スタッフの人間力とICTのコラボレーション で

エアコンが完備されている介護施設でも、わずかな体調変化が利用者の熱中症を誘発します。特に高齢者の熱中症は命の危険に直結するため、注意が必要です。まずは、介護スタッフが利用者のちょっとした動作や表情、会話から異常を感知し、熱中症をはじめとした体調異変に気づくことが重要です。それに加えて、最新のICTによる24時間サービスを活用して、利用者のバイタル計測、観察の見守りデータを見ていけば、より迅速な危機回避の行動につながるでしょう。

介護スタッフの日ごろの気遣いや観察力に加え、最新のバイタル測定システムのデータを活用して、適切な対応をよりすみやかに行っていきたいものです。

 

 

参考:

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