コロナ5類移行による介護施設、介護現場への影響は? マスク着用はどうなる?

新型コロナウイルス感染症の発生から3年が経過し、ウイルスの特性についての解明が進み、ワクチン接種も広がりました。2023年5月にはこの感染症の法的な位置づけが季節性インフルエンザと同等の5類へと移行し、感染対策としての行動制限が大きく緩和されます。そうしたなか、高齢者が感染した場合の重症化率や致死率は依然として高く、介護現場では今後の対応が注視されています。コロナ5類移行による介護現場への影響についてお伝えします。

 

新型コロナ5類移行で何が変わる?

2019年12月以来、中国で肺炎患者の集団発生が報告されて”COVID-19”と命名されてからこの方、ずっと2類感染症として指定を受け恐れられてきた新型コロナウイルス感染症が、このたび5類へと移行します。

  

感染症法では感染症を病原体の感染力や危険性に応じて5つに分類しています。新型コロナウイルス感染症については、発生当初から感染力が強く大流行を起こしやすいとされる結核などと同等の2類相当としていました。その後、数回の流行拡大を経て、現在感染の元となっているオミクロン株では従来の変異株に比べて重症化しにくいとされていることや、ワクチン接種の普及などもあり、この5月には新型コロナウイルス感染症の分類が季節性インフルエンザと同等の5類へと変わります。

 

この変更により、同時に従来の様々な規制が解除されることとなります。まずは行政による緊急事態宣言や入院勧告、陽性者や濃厚接触者への外出自粛要請などがなくなります。多くの方が気になるマスク着用に関しては、5類移行に先立ち、2023年3月13日からは状況に応じて個人や事業者の判断に委ねられるようになりました。これまでは一律的だった対策を、今後は個人や組織が判断して行うことになります。ただし、換気の悪い場所や重症化リスクの高い人が集まる場所、重症化リスクの高い人と会うときにはマスク着用が推奨されています。

 

5類移行後もウイルスは変わらないことに注意

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新型コロナ感染により抗体持つ人は、国立感染症研究所などが献血の血液を分析した結果、2022年の11月時点全国で28.6%だったことが分かっています。しかし残念ながら、抗体の保有率は高齢になるほど低く、定期的なワクチン接種が依然必要だと考えられています。重症化する人の割合は全体としては下がってきているものの、高齢者に限ってはそうではありません。直近の感染拡大第8波では、死亡した人の9割以上を70歳以上の高齢者が占めていました。現在でも高齢者が感染した場合の重症化や、命を失う危険性は非常に高いままです。

 

また、新型コロナウイルス感染症が5類に移行したからといっても、ウイルスそのものの感染力や毒性は変わらないことも忘れてはなりません。過去3年間では高齢者が多く利用・居住する介護施設では、いったん発症者が出ると施設内に一斉に感染が広がり、クラスター化することがよくありました。高齢者施設ではクラスター化しやすいという問題は今後も同じです。

さらに問題となるのが、5類移行後は保健所による受診・入院調整がなくなることです。したがって、医師が常駐していない施設では、発症者が出た場合に備えて近隣の医療機関と前もって連携体制を築いておくなどの対策が必要となるでしょう。

 

5類移行後も介護施設に求められる対策は

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以上のことから、高齢者を対象とする介護施設では、5類移行後も引き続き施設内での感染拡大を防ぐための対策が欠かせません。とはいえ、実際は地域の感染状況に応じて施設ごとに対応していくことになります。主要な対策については、厚生労働省の見解をもとにした次のポイントを参考にしてください。

参考:厚生労働省「医療機関と高齢者施設における新型コロナウイルス対策についての見解」

 

マスク着用について

施設内では日常的にサージカルマスクの着用が推奨されます。特に、生活の場が異なる利用者が集まるデイサービスなどでは、その場にいる人にはなるべくマスク着用を勧めましょう。一方、個室など私的な空間では入居者はマスクなしで過ごせます。人の出入りの少ない入居施設では共用スペースでもマスクをはずすことは考えられますが、介護スタッフは業務中も常にマスク着用が求められます。ただし、周囲に人がいない状況などでのスタッフのマスク着用の必要性については施設の管理者が判断できます。

 

エアロゾル感染対策

室内での人の密集を避け、効果的に換気することが基本です。人が多く集まる共用の空間では、機械換気を常に行い、人数が増え機械換気では換気が足りていないと思われる場合は、窓を開けての換気を追加しましょう。換気の効果を得るのが難しい脱衣室などでは、空気清浄機を活用しましょう。

 

面会について

訪問者の面会は可能ですが、訪問者にはウイルスを施設内に持ち込まないための協力が求められます。訪問者には発熱・せきなどの症状がないことを確認し、常にマスクを着用してもらい、面会できる場所を決めるなどしましょう。入居施設での個室など私的な空間では、地域の感染状況をみながら過度な制限をしないよう配慮することも大切です。ただし、地域の状況によってはさらに条件を加えることも考えられます。そうした場合はオンライン面会などの工夫も検討しましょう。

 

施設内で感染者が出た場合

・隔離について:ゾーニングは、個室または感染者を集めた部屋単位とし、トイレも感染者専用にするのが望ましいです。感染者の部屋はドアを閉じ、機械換気の常時稼働を確認しましょう。基本的にフロア全体のゾーニングは不要ですが、フロア全体に感染が広がっているときは感染確定者だけの専用フロアとすることも考えられます。

 

・感染者もしくは感染が疑われる人のケア:ケアをする人は手指消毒、サージカルマスクの着用など標準的な感染対策をしたうえで、エアロゾル曝露の可能性がある場合はN95マスクを着用し、フェイスシールドやゴーグルで目を保護しましょう。身体を密着させなければガウンの着用は不要です。短時間の接触、エアロゾル発生のおそれが少ない場合はケアする人・される人の双方がサージカルマスクを着けることで感染リスクを抑えられると考えられます。

 

・検査対象となる人は?:施設内で感染者を認めた場合は地域の保健所と相談し、接触者の検査、もしくは広範な検査のどちらかを実施します。接触者の特定が難しい場合や、感染拡大が予想される場合は、フロア単位などで広範な検査を実施しますが、その場合はPCR検査が望ましいとされています。接触者の追跡や検査により追加の感染者がみられなければ、それ以上の検査は不要ですが、続けての感染者がいれば広範な検査の継続が必要です。とはいえ、費用負担の面などからこうした対応を施設だけで行うのは難しいというケースもあり、5類移行後も国や自治体による支援の継続が望まれます。

 

 

施設ごとに効果的かつ持続可能な感染対策を

施設内での感染拡大を防ぐには、以上の対策に加え、利用者やスタッフのワクチン接種を最新の状態にしておくなど、普段から感染リスクを抑えておくことが欠かせません。今の時点では、施設内で感染者が出た場合の行政による支援など、明確になっていない部分もありますが、地域の感染状況と国や自治体からの情報を追いながら、施設ごとに工夫して有効な対策を講じることが大切です。

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