オーラルフレイル対策でQOL向上を 高齢者の脳トレになる口腔トレーニングとは

お口の健康は心身機能にも影響することがわかっていますが、近年、オーラルフレイルという概念が特に注目されています。オーラルフレイルとは、お口の健康に関する問題を放置したままでいると、最終的に心身機能の低下を招くことをいいます。逆にいえば、口腔機能を良好に保つことは、歳をとっても心身の健康とQOLの維持・向上につながるのです。そのためには、意識して口腔機能のトレーニングを行うことが大切です。オーラルフレイルのコンセプトと高齢者の脳トレにもなる口腔トレーニングについて紹介します。

 

心身機能にも影響する? オーラルフレイルとは

オーラルフレイルはオーラル(口腔)とフレイル(虚弱)からなる造語で、日本発祥の概念です。オーラルフレイルの考え方は「8020(ハチマルニイマル)運動」に関係します。「8020運動」とは、厚生省(当時)と日本歯科医師会の提唱により1989年にスタートした運動で、「80歳になっても自分の歯を20本以上保つ」ことを目標にしています。自分の歯が20本以上あれば、ほぼ満足に食べることができるとされ、生涯充実した食生活が送れるようにとの願いから始まった運動です。

この「8020運動」によりお口の健康への意識が高まったことにより、近年、「8020」を達成する高齢者が増加しています。その一方で、高齢者全体の人口が増え続けているため、「8020」を達成していない人も少なくありません。加えて、昨今は歯の本数に加え、噛む、飲み込む、話すための口腔機能を維持することも重要と考えられるようになり、オーラルフレイル対策が注目されているのです。

口に関するちょっとした衰えへの対処をせず、放置したままでいると、口の機能や食べる機能の低下から、低栄養状態になり、老化や体の衰え・疾患を招きます。身体の健康が損なわれると、運動や外出、人と会う機会も少なくなります。また、滑舌が悪くなることで、人とのコミュニケーションが取りづらくなるでしょう。このようなことが続けば、気分が落ち込んだり脳の働きが悪くなるなど、認知機能の低下にもつながってしまいます。

こうした悪循環を起こすことが、オーラルフレイルの概念です。つまり、オーラルフレイルは全身のフレイルの前兆といえるのです。ただし、体のフレイル予防と同様に、対策を行うことで、口腔機能の低下を遅らせたり、回復させられることがわかっています。

 

オーラルフレイルになるとどうなる? きっかけになるサインを知ろう

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オーラルフレイルが進むと、食事や会話を楽しめない、栄養をしっかりととれないといったことから全身の衰えや認知機能の低下を招き、生命の質や生活の質(QOL)を脅かすことにもつながります。そうさせないためには、ちょっとした口の違和感や小さなトラブルに気づき対処していくことが大切です。

ここで、オーラルフレイルに早めに気づくためのサインを紹介しておきます。以下のようなことがあれば、オーラルフレイルの始まりかもしれません。

 

・食事中にむせる、食べこぼすようになった

・固いものが食べにくく、やわらかいものを食べるようにしている

・滑舌が悪くなったと思う

・口の中がよく渇く、口臭が気になる

 

こうした状態を放置すると、さらに口腔機能が低下し、嚥下障害や低栄養状態、運動機能の障害などを招いてしまいます。しかし、オーラルフレイルの初期の段階では、生活習慣を見直す、介護予防による対応などによって、口腔機能を改善させることが可能です。

 

QOL向上のために 口腔トレーニングで対策を

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オーラルフレイル対策には、お口の動きをスムーズにしたり、飲み込む力や噛む力を強化したりするなどの口腔トレーニングが有効です。高齢者施設でのレクリエーションなどに取り入れるのもいいでしょう。QOL向上や介護予防にもなる口腔トレーニングを目的・効果別に紹介します。

 

●口・舌の動きをよくする:お口まわり、舌、唇、ほほの筋力を強化することで、唾液がよく出るようになり、舌がスムーズに動き食べ物を飲み込みやすくなります。

<パタカラ体操>

1.「パ」を、唇をはじくようにして8回続けて発音します。

2.「タ」を、舌の先を上前歯の裏につけるようにして歯切れよく8回続けて発音します。

3.「カ」を、舌の奥をのどに押しつけるようにして8回続けて発音します。

4.「ラ」を、舌を巻くようにして8回続けて発音します。

5. 以上を2セット行います。

 

●飲み込む力(嚥下機能)をつける:飲み込むための筋肉を強化することで、食事中にむせるなどの症状を改善。

<開口トレーニング>

1.ゆっくり口を大きく開けて10秒間そのまま保ちます。

2.しっかりと閉じて10秒間休みます。

3.以上を朝夕2セット行います。

*口を開けるときは痛みが出ないように無理せずに行いましょう。

 

●噛む力(咀しゃく機能)をつける:噛むための筋肉を鍛えることで、食べこぼしなどを改善します。

<あー・んー体操>

1.「あー」と声を出しながら、できるだけ大きく口を開けます。

2.舌を上あごに押しつけ、奥歯を噛みしめて「んー」と声を出します。

3. 以上を3セット行います。

*口を開けるときは無理をしないようにしてください。

 

●舌の力をつける:舌の筋肉を鍛えて、むせる、誤嚥などの症状を改善します。

<舌トレーニング>

1.あごの先に触るつもりで舌を伸ばします。

2.鼻の頭を触るつもりで舌を伸ばします。

3.左右に舌を伸ばします。

4.口の周りをぐるりと一周するように舌を動かします。左右の方向から1回ずつ行いましょう。

 

●滑舌をよくする:口の動きをよくして、はっきりと発音できるようになります。

<早口言葉>

レベル1:なまむぎ なまごめ なまたまご

レベル2:となりの きゃくは よくかきくう きゃくだ

レベル3:あおまきがみ あかまきがみ きまきがみ

レベル4:となりの たけがきに たけたてかけたのは たけたてかけたったので たけた

てかけた

1)簡単なものから、個々の利用者のレベルに合わせて行うようにしましょう。

2)1つのレベルがクリアできたら、次のレベルを目標に練習すれば励みになります。

*元気よく大きな声で言うことで、認知症予防や脳機能改善の効果も期待できます。

*姿勢をよくして言うことで、肺機能もきたえられます。

 

口腔トレーニングを習慣化して、高齢者のお口の健康を守る

高齢者にとってお口の健康を守ることは、楽しく食事をする、しっかり栄養をとるために不可欠ですし、QOLの維持・向上にもつながります。お口の健康のためには口腔トレーニングが有効ですが、高齢者施設では食事前やレクリエーションに取り入れてはいかがでしょう。特に早口言葉は脳の活性化や肺機能の向上も期待でき、脳トレとしてもレクリエーションにおすすめです。みんなで楽しみながら行い、ふだんの生活の中で習慣化できるよう工夫して、利用者のお口の健康を守っていきましょう。

 

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