介護報酬改定にみる地域密着型通所介護の現状とこれから

地域密着型通所介護は、地域包括ケアシステム構築への一環である地域密着サービスとして誕生しました。創設から4年と新しいサービスにもかかわらず、地域密着型通所介護をめぐる状況は年々厳しくなっています。2021年の介護報酬改定では、状況はさらに悪化することが予想されます。なぜ、地域密着型通所介護が窮地に立たされているのか、前回の介護報酬改定を参考に考えていきましょう。

地域密着型通所介護をめぐる現状

地域密着型通所介護は、地域住民を対象とした地域密着型サービスのひとつです。定員19名未満の小規模なデイサービスで、原則その地域に住む要介護者だけが利用できます。一人ひとりに合わせた対応がしやすいことから、対人交流が苦手な人や認知症の人にも使いやすい介護サービスです。

地域密着型通所介護は、小規模通所介護として2016年以前から存在していました。しかし、地域包括ケアシステム構築に向けて、整合性のあるサービス基盤を整備する必要があったことから、地域密着型サービスのひとつに移行されました。移行後は、保険者である市町村が管轄となったことで、地域との連携がより進めやすくなっています。

地域密着型通所介護は、地域密着型サービスのなかではもっとも新しい介護サービスです。ところが、事業所数は減少の一途をたどっており、2016年には約21,000件あった地域密着型通所介護が、2018年には20,000件を下回りました。地域密着型サービスに導入されてわずか2年で施設・事業所数が約5%も減少したのです。地域密着型サービスのなかではもっとも大きな減少率です。今後も地域密着型通所介護の数は、減少し続けると予想されています。

介護報酬改定で窮地に立たされる地域密着型通所介護

介護保険制度では創設以来、高齢者のニーズに応えるかたちでサービスの充実をはかってきました。近年は高齢者のニーズも多様化しており、在宅介護においては介護だけでなく医療へのニーズが増えてきたことから、複合的なサービスの需要が高まっている状況です。実際に、地域介護サービスのなかでも、介護と医療の機能を兼ねそなえた看護小規模多機能型居宅介護の伸び率は高く、2018年度には31.3%という圧倒的な増加率を見せています。

国では、限られた人材や財源で利用者の多様なニーズに対応できる、複合的サービスの普及を促進しています。介護報酬改定の議論テーマのひとつとなっている「地域包括ケアシステムの推進」においては、複合的サービスが促進されるよう、さまざまな加算を設けました。その結果、高齢者の多様なニーズに対応できる環境が少しずつ整ってきています。

ところが、地域密着型通所介護をめぐる現状は厳しいものになっています。通所介護と地域密着型通所介護を対象とした加算を見てみると、通所介護を主要目的とした加算が多く見られます。例えば、2018年度に新設されたADL維持加算は、「利用者の総数が20名以上」という加算要件があり、定員が19名未満の地域密着型通所介護は対象となりません。基本報酬自体はほかの通所介護に比べて高いものの、実際に算定できる加算要件が少ないのです。そのため、単独型のサービスを提供する地域密着型通所介護の置かれた状況は、今後ますます厳しくなっていくと考えられます。

厳しい戦いをどう制するかが生き残りのカギ

これからの介護は、地域包括ケアシステムの促進に向け、多様なサービスが求められる状況となることが予想されます。そのようななかで単独型のサービスである地域密着型通所介護が生き残るためには、同業他社との差別化が重要になります。地域密着型通所介護だからこそできることをいかに見つけられるかが、生き残りのカギとなることでしょう。

参考:

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