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新たな介護人材を確保する「特定技能外国人材」について知ろう
介護業界は慢性的な人材不足に悩まされています。政府の統計によると、団塊世代が75歳に達する2025年には約25万人もの介護人材が不足する可能性があるとのことです。そこで、人材不足の切り札として「特定技能外国人材」が注目されています。もっとも新しい外国人受け入れ制度である「特定技能外国人材」について、詳しく見ていきましょう。
特定技能外国人材とは?
特定技能外国人材とは、2019年4月から始まった新しい外国人労働者受け入れ制度です。国内では十分な人材が確保できない特定の産業において、一定の専門性や技能を持つ外国人を受け入れることで、人手不足に対応しようとする制度です。特定技能外国人材の受け入れが可能な産業は「特定産業分野」と呼ばれ、次の14分野が指定されています。
- 介護
- 宿泊
- 外食業
- 飲食料品製造業
- 建設
- 航空
- 造船・舶用工業
- 素形材産業
- 電気・電子情報関連産業
- 産業機械製造業
- 自動車整備
- ビルクリーニング
- 漁業
- 農業
産業ごとに人手不足の状況に応じた受け入れ見込数が試算されており、介護分野は5年間で最大6万人の受け入れを見込んでいます。
特定技能の介護人材の条件
外国人が日本に在留する場合、入国管理局で在留資格を認定されなければなりません。特定技能外国人材での在留資格には次の2種類があります。
- 特定技能1号
特定産業分野で必要とされる知識や経験を有し、生活や業務に必要な日本語力がある外国人が対象。在留期間は1年、6か月または4か月ごとの更新で、通算上限5年まで。家族の帯同は基本的に認められない。特定産業のすべてで在留資格を得ることができる。
- 特定技能2号
特定産業分野における熟練した技能を要する業務に従事する外国人が対象。3年、1年または6か月ごとの更新で、日本語能力水準は試験での確認は不要。要件を満たせば妻や子の帯同も可。2号での在留資格は、建設と造船・舶用工業に限られ、その他の特定産業では認められていない。
介護分野で特定技能の介護人材を受け入れる場合は、事業所が直接雇用することになります。特定技能で受け入れた外国人は、入浴や食事、排泄などの身体介護、レクリエーション、機能訓練の補助などに従事することができます。ただし、訪問介護などの訪問系サービスは対象外です。
また、介護の技能や日本語能力については、試験で相当の水準に達しているかを確認する必要があります。介護技能では、現地語で介護技能を確認する試験が新設され、2019年4月から国外で年6回程度の実施が予定されています。日本語能力水準については、日常生活に必要な日本語能力と介護業務に支障がない程度の日本語能力を判定する別の試験が、2019年4月から国外で年6回程度実施される予定です。
特定技能の介護人材と他の外国人受け入れ制度との違い
介護分野で外国人材を受け入れる制度には、特定技能外国人材以外に「EPA(経済連携協定)」「在留資格『介護』」「技能実習」があります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
EPA(経済連携協定)
EPAは2国間の経済連携を強化するために、外国から人材を受け入れる制度です。介護分野では、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3国に限られています。EPAでは、介護福祉士候補者として入国し、介護福祉士養成施設もしくは介護施設などで就労しながら研修を受け、介護福祉士国家資格取得をめざします。配偶者や子の帯同が可能で、在留期間の更新回数に制限はありません。
在留資格「介護」
合法的に日本国内に滞在するための資格を在留資格といいます。在留資格「介護」は2017年に9月に始まりました。留学生として入国し介護福祉士養成施設にて学んだのち、介護福祉士国家資格に合格し介護の仕事に従事することになると、在留資格「介護」として働くことができます。EPAと同様に、配偶者や子の帯同が可能で、在留期間の更新回数に制限はありません。
実務経験にて介護福祉士資格を取得した外国人に対しては、今後在留資格「介護」を得ることができるよう、法務省にて法令の改正に向けた準備が進められています。
技能実習
技能実習は、日本の技術を外国でも活用してもらうため、来日して技術を学んでもらう制度です。各段階において技能評価試験を実施します。技能実習での在留期間は1号で1年以内、2号で2年以内です。3号も2年以内であるものの、合計で最長5年まで延長することができます。技能実習の目的が「本国への技能移転」であるため、在留期間が終了すると帰国する流れとなっています。また、2回目の技能評価試験以降であれば、特定技能や実務経験ルートの在留資格「介護」への変更も可能です。
介護分野における特定技能外国人材の今後の動向に注目しよう
特定技能外国人材の受け入れは、始まったばかりです。介護業界における先行きは、まだ不透明であるといわざるをえません。しかし、これから法整備が進めば、介護業界の人材不足の解決に貢献する可能性はあるでしょう。まずは今後の動向に注目したいところです。
参考: