ここが変わった!介護報酬改定2021<通所介護編>

令和3年(2021年)度の介護報酬改定が4月1日に施行されました。今回の改定では、新型コロナウイルス感染症や頻発する大規模災害を受けて、感染症や災害への対応力をより強固なものにしています。加えて、「地域包括ケアシステムの推進」、「介護人材の確保・介護現場の革新」、「自立支援・重度化防止の取組の推進」、「制度の安定性・持続可能性の確保」の項目を柱に、全体の改定率が+0.7%となります。この最新の改定が、介護保険制度を利用する幅広い高齢者層に活用されている通所介護にどのような効果や改善をもたらすのかについてまとめました。

通所介護の主な改定ポイントまとめ

  • 感染症対策の強化

新型コロナウイルスへの感染状況が好転しないなか、多くのデイサービス事業所でクラスター感染が発生しています。そのため今回の改正では、通所系介護事業所には現行の委員会の開催、指針整備、研修実施、訓練(シミュレーション)実施などが義務づけられました。また、感染症や災害が発生した場合に必要な、地域の介護の拠点として体制を整える役割も明確に打ち出されました。そのため、訓練の際には地域住民の参加が得られるように努めなければならないとされています。

その一方で、感染症や災害などの影響から利用者数が一時的であっても減少した場合には、規模区分の変更の特例措置や、一定期間、基本報酬の3%の加算が設けられました。利用者数が劇的に変動した場合でも、安定したサービスの提供が可能となるように考えられています。

  • 地域との連携の強化

今回の改定では、地域包括ケアシステムの推進がより明確化されています。高齢者が住み慣れた街や地域で人間の尊厳を保持しながら過ごせるためには、医療、行政、介護、コミュニティなどさまざまな方面からサポートができる、包括的なシステムづくりが重要です。その一環として、通所介護では、地域住民やボランティア団体との連携や、協力を得るための地域交流に努めなくてはならないという方向性が打ち出されました。このことは、地域で高齢利用者の見守りを多角的に行うという点で意義があります。

  • リハビリテーション・機能訓練、口腔・栄養の取り組みの一体的な推進

比較的介護度が低く、要支援者も含め歩行や運動もできる利用者が多いデイサービスに対し、自立支援、重度化防止を効果的に進めるために加算が見直されました。例えば、生活機能向上連携加算Iについては、外部のリハビリ専門職等と連携をとりやすくするため、事業所を直接訪問しないでICT活用により利用者の状態を把握・助言した場合も評価されます。また、予防の意味合いで口腔・栄養スクリーニング加算の新設、従前の栄養改善加算に加え栄養アセスメント加算の新設と、ケアマネジメントの充実が図られています。

 

入浴介助加算の見直し

今回の改定では、利用者の自宅での入浴の自立を図るための加算が新設されました。医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、ケアマネージャー、訪問看護など多職種が連携し、利用者の自宅での入浴環境を踏まえて個別の入浴計画を作成、介助をするというものです。これを利用した場合、通所介護では次のようなことが可能です。自宅と同じ更衣や入浴の環境を提供するケアプランをつくりデイサービスと自宅の両方で入浴を行い、将来的に自宅での入浴を実現していくといったサービスを提供できます。

  • 同一建物減算適用時等の区分支給限度基準額の計算方法の適正化

通所介護系サービスでは、事業所と同一建物に居住する利用者に対してサービスを提供した場合に減算となります。例えば、特別養護老人ホームにデイサービスが併設されている場合が該当します。なお、サービス付き高齢者向け住宅等(以下、サ高住)に対して、事業所と同一の建物に居住する利用者以外にサービス提供を行うよう努めるという勧告が出されました。これは、社会問題化しつつある利用者の囲い込みへの対策として、サ高住を利用して利益確保しようとする介護事業者への監視強化といえるでしょう。

注目したい新設、改善ポイント

今回の改定では特に、比較的自立している後期高齢者へのさらなる自立支援や、重度化しないようにフレイルの防止のためのさまざまな施策が反映されています。例えば、栄養アセスメント加算(50単位/月)が新設されました。利用者ごとに管理栄養士、看護職員、介護職員、生活相談員そのほかの職種の者が共同で栄養アセスメントを実施し、利用者またはその家族に対して結果を説明、相談等対応することで加算されます。同じ観点から、ADL維持等加算も拡充が図られています。利用者(評価対象利用期間が6ケ月を超える者)の総数が10人以上で、半年間のADL値を測定し(月ごとに厚生労働省に提出)細目条件下で目標を満たした場合に加算が受けられます。また、LIFEを用いた利用者のADL情報の提出と、フィードバックの活用も必要です。

通所介護においてしっかりと食生活や運動能力の管理を行うことによって、厚生労働省の最終目標である「健康寿命の延伸」を目指すというはっきりした姿勢がうかがえます。

オンライン科学的介護データCHASE・VISITそしてLIFEとその役割とは?

厚生労働省が介護保険制度のICT改革の要(かなめ)としてとらえる科学的介護のデータベースシステムは、CHASEとVISITが統合され、新名称をLIFEとして令和3年4月からスタートしています。このLIFE情報の収集・活用を評価する加算として、科学的介護推進体制加算(40単位/月)が新設されました。加算の目的は、全国の介護事業所に積極的な情報入力を推進することです。

介護のビッグデータが構築され活用されれば、介護の仕事の質が向上し、結果的に介護保険利用者の自立支援・重度化防止が促進されると考えられるのです。データベースの活用方法として、将来的には次のようなことが可能です。例えばデイサービスで、介護スタッフが認知症の利用者の入浴ケアで困ったときに、スマートフォンからLIFEにアクセスして同じケースのケア情報を検索できます。複数の事例から解決策を見つけ出し、安全にかつ満足のいく対応ができるようになるといった効果が期待されています。

ウィズコロナ時代のデイサービスのあり方とは?

新型コロナウイルス感染症が流行するなか、高齢者の感染のクラスター発生の温床となってしまったデイサービス。だれもが気軽に通える、自宅から送迎をしてくれる、入浴サービスがある、リハビリができる、健康管理をしてくれる、レクリエーションに参加して友達づくりができるなどの点から、利用者や家族に人気のサービス事業です。事業者は今後、より厳格な感染対策を災害対策と並行して継続していかなくてはなりません。

介護保険の基本理念である自立支援の観点からも、地域社会と連携を図りつつ、要支援や介護度の低い利用者の健康年齢を伸長させることも、通所介護事業所の大きな責務といえるでしょう。


参考:

関連記事

  個人情報保護方針はこちらをご確認ください