ここが変わった!介護報酬改定2021<短期入所生活介護編>

介護報酬の令和3年度改定では、新型コロナウイルス感染症や、地震、台風などの大規模災害対策に主眼を置き、全5項目の大きな改定の柱を設けています。報酬改定率は全体で0.7%の上昇となっています。新型コロナウイルス感染症に対応するための評価として、2021年4月から9月末までの期間限定で、基本報酬に0.1%上乗せする特例措置も急きょ設定されました。国民健康保険団体連合会(国保連)への請求をサポートする各介護支援ソフト提供会社も、この特例措置の計算修正になんとか対応しているようです。

最新の介護報酬改定が、ショートステイと呼ばれる短期入所生活介護にどのような効果や改善をもたらすのかについてお伝えします。

短期入所生活介護(ショートステイ)の主な改定ポイントまとめ

短期入所生活介護(ショートステイ)の改定内容は、基本的には特別養護老人ホーム(以降、特養)と同じと考えてよいでしょう。実際、多くの特養が同じ建物内にショートステイを併設しており、同じハードウエア、スタッフでの運営が行われています。特養や有料老人ホームへの入居を考えている利用者や家族が、体験のために「お試し」でショートステイを利用することも珍しくありません。

今回の主な改定内容としては、以下が挙げられます。

  • 短期入所生活介護基本報酬の引き上げ
  • 感染症対策および災害対応の強化
  • 認知症専門ケア加算等の見直し、認知症に関する取り組みの情報公開の推進、認知症介護基礎研修の受講の義務づけ
  • 看取り期における本人の意思を尊重したケアの充実
  • 見守り機器を導入(夜間人員配置労力の軽減化)した場合の夜勤職員配置加算の見直し
  • 介護ロボット等の見守り機器やインカム装着等のICT導入の推進
  • 会議や多職種連携の際のICTの活用
  • LIFE(※)情報の収集・活用とPDCAサイクルの推進を評価する加算の創設
  •  寝たきり予防・重度化防止、褥瘡のためのマネジメントの推進

これらは、特養と共通する施設介護としての改正点といえるでしょう。

ショートステイとしての改正ポイントとしては、以下のとおり在宅サービス機能との連携が挙げられます。

  • 退院・退所時のカンファレンスにおける福祉用具専門相談員等の参画促進
  • リハビリや機能訓練、口腔ケア、栄養指導などの取り組みの一体的運用により、自立支援と重度化防止を推進
  • つまり、ショートステイの利用者に対して、福祉用具専門相談員や作業療法士から適切な助言を得る機会を増やし、より効果的な在宅介護を実現することで、自立支援を促すということです。また、リハビリや口腔、栄養に関する取り組みを強化することも、重度化防止と自立支援を目指すものです。

ショートステイとは?その機能と役割

介護保険利用の範囲としては、短期入所生活介護サービスと短期入所療養介護サービスの2種類があります。

短期入所生活介護サービスは、特養や介護老人保健施設(老健)または、市区町村の複合的な福祉施設の付帯施設として運営されているケースが多いようです。専用車両での送迎、介護スタッフによる食事や入浴などのサービス、看護師による健康管理や生活全般のケアやリハビリが提供され、レクリエーションも楽しめます。一般的に「ショートステイに行く」といわれている、利用者が定期的に通所するサービスのほとんどは、このような生活介護型です。

短期入所生活介護サービスは、自宅で利用者を介護する家族、近親者がさまざまな理由で家を空けなくてはならなかったり、介護ができなくなったりした場合の、緊急避難的な利用にも対応しています。

一方で、短期入所療養介護サービスは医療型です。介護療養型医療施設に併設されている場合が多く、介護スタッフ以外にも医師や看護師が常駐しており、常時ベッド上での医療サービスが必要な利用者が多いといわれています。

ショートステイの利用可能日数は、連続して30日までという制限があります。上述のように、特養入居を検討中にお試し入居としての利用や、病気治療後に退院が決まり、自宅での在宅介護体制を整えるまでの間の利用も可能です。例えば、退院が決まったものの、自宅に車いす用のスロープや介護ベッド、手すりなどの福祉用具が準備できていないことはよくあります。退院後に利用する訪問介護の事業所が決まらない場合は、居宅介護のケアマネージャーがショートステイ利用の手配をすることもあります。

在宅で限られた家族と過ごしてきた利用者にとっては、ショートステイを利用することで介護専門職によるサービスを受けられます。それにより自立支援が促され、以前より食事や入浴、トイレなどが自分でできるようになったり、生活のリズムが整ってきたりするという効果も見られます。多くのスタッフや同居する利用者たちとコミュニケーションをとることで、社会生活の感覚を取り戻すことができ、自立への一歩を踏み出せるのです。

家族へのレスパイトケアの一環としてのショートステイの役割

訪問介護と組み合わせたショートステイ利用は、利用者だけではなく、家族の生活の質も向上させる効果があります。これは「レスパイトケア」と呼ばれる家族向けケアの一環であり、家族の介護の負担を軽減するために大きな意味があります。

自宅での介護の場合には、訪問介護のヘルパーが毎日入っても、夜間や早朝は家族が対応しなければなりません。例えば、体の大きな認知症の夫を介護しなくてはならない高齢の妻や子どもにとっては、夜間のオムツの取り換えといった排せつ介助はひと仕事となります。認知症の影響による暴力や暴言、徘徊(はいかい)や転倒などが続くと、介護者の心身が疲れきってしまう場合も多いでしょう。

そのような場合に、居宅介護のケアプランで毎月定期的に1週間程度のショートステイが実現すれば、家族にとっては貴重な休息の時間になるでしょう。これが、レスパイトサービスです。

首都圏や、ショートステイの受け入れ可能な定員がひっ迫している地域では、利用の調整にひと苦労があるようです。年末年始になると、居宅介護事業所のケアマネージャーが、ショートステイの利用枠を確実に押さえるために奮闘している話をよく聞きます。自宅介護をしている家族の、「お正月はゆっくり過ごしたい」という意向をくんでのことでしょう。本来は、新年は家族全員で迎えるものかもしれません。しかし、認知症や身体の介護を必要とする利用者を抱える家族の、せめてこの時期くらいは介護の手を休めたいという願いをかなえることも、ショートステイの重要な役割です。

今回の改定で、緊急短期入所受入加算「7日以内」であったのが、「7日以内を原則として、利用者家族の疾病等やむを得ない事情がある場合には14日以内」となりました。

今後のショートステイに期待される点とは?

今回の改定では、ショートステイ利用時にLIFE(※)を活用して積極的に利用者の介護情報を集積し、在宅介護への活用を推進することが明記されています。例えば、利用者のADL、栄養、口腔、嚥下(えんげ)、認知症などへの対応(ケアのあり方)情報をショートステイと在宅(訪問介護)で共有し、データベースを構築して介護の質の向上を目指すことが可能です。

今後、ショートステイには、在宅介護の大切な情報ステーションとして地域包括ケアの一環を担い、その役割を果たしていくことが期待されるでしょう。

※:高齢者の状態、ケアの内容などの情報を収集する科学的介護データベースとして創設されたCHASEが、2017年度から運用されている通所・訪問リハビリテーションの質の評価データなどを収集したデータベースVISITと統合され、2021年4月に新名称LIFEとして運用が始まりました。


参考:

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