後期高齢者が激増! 2025年問題に向けて介護施設が取り組むべきこと

団塊の世代が後期高齢者になる2025年、国民の3人に1人が65歳以上となり、高齢者人口が激増します。これにともない介護現場では人材や施設の大幅な不足が見込まれ、介護を必要としているのに受けられない「介護難民」の問題が深刻化するといわれています。いわゆる2025年問題ですが、この難局を乗り切るための国の施策や施設単位で考えられる取り組みを紹介します。

 

2025年、介護現場で何が起きる? その背景は

2025年には団塊の世代と呼ばれる人たち全員が75歳以上の後期高齢者になります。団塊の世代とは1947年から1949年までに生まれた人たちで、その人口はおよそ700万人。大きな人口比率を占めることから、2025年には65歳以上の高齢者の人口は3600万人を超え、国全体の人口の約30%になります。また、全人口に占める75歳以上の後期高齢者の比率が増加し、同年には約18%になり、その後も後期高齢者の人口比は増加を続けることが予想されます。

こうした高齢者人口の増加によって生じる社会の様々な分野への影響を「2025年問題」といいます。その最も大きな影響を受けるのが介護の分野です。厚生労働省の統計をみると、年齢が上がるのに比例して介護を必要とする人の比率は増えていきます。2019年の統計では、65歳以上の全体の要介護認定率は18.6%ですが、75歳以上は32.1%、85歳以上は60.6%でした。今後、後期高齢者の人口が増え続け、長寿化も進むと予想されるので、必然的に介護を必要とする人も増えていきます。

これに対し、少子化もさらに進み、様々な業種での人材不足も懸念されています。とりわけ深刻なのが介護業界ですが、要介護者の増加する一方で、慢性的な人材や施設の不足により、すでに介護サービスを必要としているのに受けられない「介護難民」の問題が顕在化しています。厚生労働省の推計では、2025年には245万人の介護スタッフが必要とされていますが、2016年の時点ではおよそ190万人にとどまっている状況です。2025年まで残りわずかとなったいま、介護難民や介護の人材不足への取り組みは喫緊の課題です。

 

2025年問題に向けての政府の取り組みは

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介護難民の問題を解決していくには、介護の人材確保が欠かせません。現状、介護の人材確保が困難な理由としては、労働人口の減少に加え、賃金の低さや業務負担の重さなどが考えられます。これから人材を増やしていくには、これらの問題を改善していくことが必要でしょう。

政府は年間6万人の人材確保を目指すとしていますが、それには、介護の労働環境を改善し離職者を減らすことと同時にあらたな人材の獲得や育成も欠かせません。そこで、政府や自治体では次のような取り組みを進めています。

 

<介護離職者をなくすために>

・介護職員等特定処遇改善加算は、政府による、賃上げによる介護職員の処遇改善のための制度です。一定の経験や技能のあるスタッフが重点的な対象になるものの、事業所の運用次第でスタッフ全体の待遇改善も可能で、介護事業所にはこの制度の活用によりスタッフの給与改善が期待されます。

・スタッフの業務負担の軽減と生産性向上のために介護ロボットやICT導入の支援制度が都道府県ごとに設けられています。

 

<人材育成と確保のための厚生労働省の施策>

・都道府県と連携し、介護福祉士などを目指す学生への修学資金貸付制度、中高年の未経験者への研修支援と研修後の就業マッチング、シルバー人材センターなどとの連携により、あらたな人材育成と確保の取り組みを進めています。

・外国人の在留資格に新しく「介護」を加え、資格取得や語学習得の支援、海外からの人材の定着のための支援窓口の創設など、外国人の人材受け入れの拡大を図っています。

・子育て世代の人材確保のために、都道府県、市区町村との連携により、介護事業所内の保育施設の設置・運営に関する支援を行っています。

 

施設として考えられる取り組みとは

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施設ごとに現場の状況は異なりますが、人材不足の解消のために、介護事業者には上記の国や自治体の施策を活用して労働環境の改善をすることが望まれます。それは、2025年問題への対策にもつながります。具体的には、このような取り組み例が考えられ、すでに実施している事業所もあります。

 

<ICTの活用>

・介護支援ソフトを導入することで、記録業務や情報共有の効率化、情報管理の適切化により、生産性の向上を図る

・複数の施設を運営する事業者の場合、複数施設をLAN接続しシステムを一元化することで大幅に事務作業を効率化する

・人手に頼ることの多い見守り業務に見守りシステムを取り入れる。見守りシステムとナースコールとの連携により、業務負担の軽減・情報共有の円滑化につながる

・訪問業務の多いケアマネジャーの業務を一部リモートワーク化することで、移動にかかる業務負担を軽減する

・オンライン研修の体制を構築して、スタッフがスキルアップのための研修を受けやすい環境へと整える

 

<雇用環境の改善>

・出産後の離職を防ぎ、子育て世代が働きやすいよう、時短勤務や夜勤の免除など柔軟な勤務体系を取り入れる。事業所内に保育施設を併設する

・既存の業務内容を分析し、見直すことで、役割分担やシフトを適切化する

 

魅力ある介護の職場環境づくりがカギ

介護難民を減らすには、介護の人材不足の解消が欠かせません。そのためには、離職者を減らし、就業希望者を増やす必要があります。それは、現状の職場環境を働く介護スタッフがより働きやすく、就業希望者にとって魅力的なものにしていくことです。そうした取り組みによって生産性や介護の質の向上も期待できます。スタッフにとって魅力的な職場環境づくりが2025年問題への対策のカギといえるでしょう。

 

 

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