「いいとこどり」の小規模多機能型居宅介護 スタートから11年、その光と影とは?

平成18年スタートの新しい介護サービスの形態として登場した小規模多機能型居宅介護。当初は利用者にオーダーメイドのサービスが提供できると脚光を浴び、「夢のサービス」とまでいわれました。ところが、いまだに十分に浸透しているとはいえないようです。その原因とは何でしょうか?

小規模多機能型居宅介護とは?

小規模多機能型居宅介護とはどのようなものか、詳しく見てみましょう。

利用者が住み慣れた地域に密着した小規模の施設を、自由なスケジュールで利用でき、なおかつ自宅でも施設でも介護を受けられるもの。いわば訪問介護と、デイサービス、ショートステイを組み合わせたサービスを定額で受けられるサービスといえます。

ひとつの事業所の定員は決まっており、平成27年度から登録定員人数が29名になりました(平成27年4月より25名から29名に変更)。それに対応する介護スタッフは日中、通いの利用者3人に1名、訪問介護への対応が1名、夜間の宿泊利用者や緊急時の対応には合計2名という体制が定められています。また、そのスタッフ構成は専任の介護支援専門員(ケアマネージャー兼務可)1名、看護職員(非常勤可)1名が必要など細かい規定があります。

小規模多機能型居宅介護の現状と問題点とは?

「いいとこどり」の介護サービスといわれる小規模多機能型居宅介護。確かに通所はデイサービスの利用に比べ時間や曜日も自由。簡単な連絡で送迎をしてくれ、緊急時も臨機応変に対応。宿泊に関しては、定員内であれば通いなれた施設に電話一本で当日宿泊が可能。ショートステイのように、事前に申し込みをしても場合によっては希望日の利用がかなわないなどということもありません。

また、訪問介護も、ヘルパーの訪問介護のようにケアマネが定めた時間や手順通りのサービスではなく、利用者が望むサービスが必要なだけ受けられ、何かあればかけつけてもらうことも可能という柔軟性に富んでいます。

しかし、そのサービスに取り組む事業者からは、 採算が取りにくいこと(事業性の低さ)や、専任のケアマネージャーの存在により、従来の利用者になじんでいた居宅介護ケアマネがスポイルされてしまう事象が指摘されています。本来は通所がメインのコンセプトでしたが、実態としては宿泊を望む利用者が多く、通所とのバランスが取れないという現状もあります。また、訪問や夜間対応の看護職員の必置が事業所の負担になっているという問題点も指摘されています。

どうなる?これからの小規模多機能型居宅介護

現在、小規模多機能型居宅介護施設は国内に4,966ケ所、実利用者約8.4万人(厚生労働省介護給付費事態調査 平成28年1月審査分)といわれています。施設の分布は都道府県別にかなりばらつきがあり、各自治体が普及、設置に力を入れているかどうかの差が歴然と表れています。

平成29年9月の政府の社会保障審議会介護給付費分科会では運営基準の見直しが検討され、居宅のケアマネージャーが小規模多機能居宅型介護の利用者も担当できるようにすること、看護職員の必置を訪問看護ステーションなどとの連携を認め、弾力的に運用することなどが議論されました。

現場の介護スタッフにとっても、小規模多機能介護施設は利用者に親身に接することができ、やりがいのある仕事ができるとして評判が高く、ここ数年、就業、転職希望も多いようです。

行政も改善に本腰を入れ始めた「いいとこどり」の小規模多機能型居宅介護。ただし、せっかくの「いいとこどり」であっても、小規模多機能型居宅介護というサービス自体の認知度、理解度が低すぎる! という声もあり、今後の行政や事業者からのより強い発信が期待されています。

 

参考:

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