高齢者と子どもの世代間交流の今とこれから

高齢者と子どもの世代間交流は、高齢者と子どもの双方にさまざまな良い結果をもたらすことがわかっています。そのため、高齢者と子どもの世代間交流を行う介護施設は年々増えてきています。そのなかから、介護業界に新風を吹き込んでいる3つの施設の取り組みを見ていきましょう。

駄菓子屋を併設し高齢者と子どもの世代間交流を実現「銀木犀」

「銀木犀(ぎんもくせい)」は首都圏を中心に12施設を展開するサービス付き高齢者向け住宅です。さまざまな工夫を凝らしながら、介護予防から看取りまで行っていることで、全国から注目を浴びています。

銀木犀では、すべての施設に駄菓子屋を併設しており、地域に住む子どもたちが毎日のように買いものにやってきます。入居者が店番をすることで、子どもたちとの世代間交流を図ることができているのです。

食堂も一般に開放しており、さまざまな人が来訪しやすい雰囲気がつくられています。食堂で提供される食事は手づくりで美味しく、ボリュームもあるため、若い世代の家族連れにも人気のスポットとなっているほど。2019年5月にオープンした銀木犀船橋夏見では、希望すれば入居者も、併設されたレストランでスタッフとして働くことができます。

このように、銀木犀は地域住民が気軽に立ち寄りやすい駄菓子屋やレストランを併設することにより、高齢者と子どもの世代間交流だけではなく、地域で暮らすさまざまな人々とのつながりを実現しているのです。そのつながりには「認知症の人」「施設に入っている人」といった偏見はありません。誰もがひとりの人間として、自分らしい生活を送りながら自然とつながっていく関係性が構築されているのです。

高齢者と子どもの世代間交流ができる街をつくった「シェア金沢」

石川県にある「シェア金沢」は、「ごちゃまぜの街」をコンセプトに2014年にオープンしました。シェア金沢には、高齢者が入居するサービス付き高齢者向け住宅だけでなく、障がいを持つ子どもの入所施設や障がい者の就労施設、アトリエ付きの学生向け住宅が整備されています。

シェア金沢にあるのは、住宅や障がい者の施設だけではありません。レストランやマッサージ店、キッチンスタジオ、クリーニング店など、地域住民の生活を支える店が軒を連ねています。共同売店や菜園、温泉なども備えており、サービス付き高齢者向け住宅に入居する高齢者が希望すれば、仕事に就くこともできます。2016年には学童保育もできました。シェア金沢で暮らす高齢者や障がいを持つ人々、地域住民など、子どもから高齢者までさまざまな人々が、住民としてつながり合いながら生活しています。

シェア金沢でも、世代間交流は高齢者と子どもに限定されていません。街に暮らす人や仕事をしに来る人、客として訪れる人など、シェア金沢に関わるすべての人々が世代を超えて自由に交流できる場所、それがシェア金沢という街なのです。

団地の一室に施設をつくり高齢者と子どもの世代間交流を図る「ぐるんとびー」

全国で唯一、UR賃貸住宅の一室に高齢者の入居施設をつくったのが「ぐるんとびー」です。2015年に誕生したぐるんとびーは、これまで紹介した銀木犀やシェア金沢の施設と違い、少人数の利用者を対象に複数のサービスを継続的に提供できる、小規模多機能型居宅介護施設となっています。

小規模多機能型施設では、訪問介護と通所介護、ショートステイといった複数の介護サービスを1か所で提供しています。いつも同じスタッフに対応してもらえることから、利用する高齢者や家族に安心感を与えることができる施設として、年々数を増やしている介護保険サービスのひとつです。小規模多機能型居宅介護では、利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるための支援が行われています。

ぐるんとびーには地域の子どもたちが自由に行き来しており、高齢者との交流を深めています。交流は慰問会などの特別なイベントを通したものではなく、日常生活の流れのなかに子どもたちが自然と加わっているというもの。しかも、交流はぐるんとびーの内側だけにとどまりません。実は、ぐるんとびーの利用者やスタッフのなかには団地内に住居を構える人もいるのです。代表を務める理学療法士の菅原健介氏も、スタッフに先駆けて家族で団地に引っ越してきました。今やぐるんとびーを中心として、利用者とスタッフの生活が団地内にできあがりつつあります。

したがって、ぐるんとびーのスタッフが交流を深めるのは、利用者や子どもたちだけではありません。団地の役員を務めるなどして団地内の住民との交流も深めているのです。団地の一室の小さな施設であるぐるんとびーもまた、銀木犀やシェア金沢と同様にさまざまな世代との交流をさかんに行っているのです。

今や世代間交流は高齢者と子どもだけにとどまらなくなっている

今回紹介した3施設では、施設ごと地域に開放し溶け込んでいくことで、高齢者と子どもの世代間交流を実現しています。さらに、その交流は高齢者と子どもだけにとどまらず、障がい者や地域住民などに広がりを見せています、今後は、地域や多世代との交流をさかんに行う介護施設がますます増えていくことでしょう。

参考:

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