2025年問題が介護業界にもたらす危機とは?

「2025年問題」をご存じですか? 戦後の1947年~49年、いわゆるベビーブームに出生した「団塊の世代」と呼ばれる膨大な人口帯が、75歳以上の後期高齢者となっている2025年。世界的にも類を見ない高齢社会が日本において現実化します。それにより、国の福祉財政、行政の対応が追いつかずバランスを崩し、医療、介護などのサービスに支障をきたすのではないかという懸念が、2025年問題なのです。

 

数字で読み解く2025年問題

それでは、2025年問題を具体的なデータで読み解いてみましょう。

総務省統計局の報道資料によれば、2019年9月15日時点における65歳以上の人口は3,588万人、75歳以上は1,848万人と推計されています。これが2025年になると、65歳以上の人口は3,677万人、75歳以上は2,180万人にまで増えると予測されているのです。全人口に占める割合としては、2019年9月15日時点で65歳以上は28.4%、75歳以上が14.7%ですが、2025年にはそれぞれ30.0%、17.8%に上昇するとされており、高齢化がさらに進むことがわかります。

また、65歳以上の高齢者でひとり暮らし世帯は増加傾向にあります。国立社会保障・人口問題研究所の調査報告「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2018(平成30)年推計」によると、2015年時点で約625万世帯であったのに対し、2025年には約751万世帯にのぼる見込みとなっています。

このままでは、高齢者や医療を支える健康保険や年金の収支バランスにも大きな影響がおよぶ可能性があります。財源問題だけでなく、後期高齢者層に対応する医療や介護の人材はしっかりと確保できるのでしょうか?

介護難民が生まれる?

そのような状況下で、注目されているワードが「介護難民」です。介護難民とは、要介護状態であるのにもかかわらず、介護サービスを受けられない状態にある高齢者を指します。

厚生労働省が2015年6月に発表した「 2025 年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について」によると、介護人材の需要見込みは2025 年度において 253.0 万人と推測されています。しかしながら現状の予測では、2025年度の介護人材の供給見込みは215.2 万人。 需給ギャップは37.7 万人 となっており、早急な対策が迫られているのです。

また、かつての高度経済成長期に、東京、大阪など大都市部に膨大な人口の団塊の世代が定住したことから、首都圏をはじめとする都市部で高齢化が進むことが予測されます。2025年の高齢者人口は、東京都と近隣の埼玉、千葉、神奈川各県を合わせると、約900万人にのぼると見込まれています。

介護の施設や人材不足によって、首都圏でのひとり暮らしや老老介護という介護難民が、今後ますますあふれ出るのではないかという懸念が、今や現実化しようとしているのです。

介護業界はどう対応するべきなのか?

公益財団法人介護労働安定センター発表の「平成29年度介護労働実態調査」によると、人材不足を感じている全国の介護事業者は66.6%にのぼるうえ、人材不足感は年を追うごとに増していく傾向にあります。また、人材が不足している理由については88.5%の介護事業者が「採用が困難である」と回答しています。

採用困難の根本的な原因としては、「同業他社との人材獲得競争が厳しい」、「他産業に比べて、労働条件等が良くない」、「景気が良いため、介護業界へ人材が集まらない」が挙げられています。特に若い世代には人気がない職業の代表というイメージがあるようです。

政府も処遇改善予算を組み、介護職の大幅な報酬アップに取り組んでいます。また、厚生労働省の調査によると介護福祉士資格保有者は国内に150万人いますが、実際に介護職に従事しているのは80万人程度にすぎません。そのため、介護福祉士資格保有者への再就職推進、59時間の研修受講で取得できる介護従事者資格「生活援助従事者研修」の新設、外国人介護職の育成就労など、さまざまな施策を打ち出してはいます。

介護業界も手をこまねいているだけではなく、若い世代が働きたいと思える環境づくりに、より積極的に取り組むべき時期が来たといえるでしょう。

 

参考:

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