深刻化する介護施設の人手不足、その原因と解決策は?

日本は超少子高齢化時代に突入しています。2018年時点ですでに人口の4人にひとりが65歳以上となっており、介護職の人材不足は待ったなしのところまで切迫しています。

2000年に創設された介護保険制度がすでに根付き、「子が親の面倒を見る」「夫は終身雇用の会社人間、妻が家を守り義父母の面倒を見る」という昭和の家庭様式は消え去りました。さまざまな形態の介護サービスを組み合わせて利用するという介護の多様化が進み、そこにさまざまな介護事業ニーズが拡大し、人材不足に拍車をかけています。

厚生労働省の調査では、2019年には29.2万人が、特別養護老人ホームへ入居を希望するも待機状態となっているのです。「介護する人がいない、足りない、要介護者がますます増えていく」という慢性的な状況は今後も進行することが予想されます。

介護施設における深刻な人手不足の現状と対策についてまとめてみました。

なぜみんな働きたがらないのか?なぜ辞めるか?

介護労働安定センターが発表した2018年実施の介護労働実態調査結果によると、介護労働者に尋ねた「労働条件等の悩み、不安、不満等(複数回答)」への回答第1位は「人手が足りない」であったことからも、人手不足は介護現場においても深刻な問題となっていることがわかります。

そして、同調査では介護人材不足の最大の理由(全体の89.1%)が、「採用が困難である」ことにあると示されています。つまり、募集活動をしても人材が確保できないということです。

介護職の人気がない根本的な原因としては、平均給与が他産業より低い、労働条件が良くない(たとえば夜勤があり仕事がきつい)などが考えられます。前述の「労働条件等の悩み、不安、不満等(複数回答)」においても、回答の第2位に「仕事内容のわりに賃金が低い」が上がっています。賃金について、具体的なデータで見てみましょう。所定内賃金が月給である介護労働者の月平均給与は23万1,553円(同上調査)ですが、これは全産業の平均月給水準の30万6,200円(厚生労働省平成30年賃金構造基本統計調査)とくらべ、かなりの格差があります。

また、離職率の高さも介護業界の憂慮すべき問題です。2017年実施の介護労働実態調査では離職理由についても調べており、第1位には「職場の人間関係に問題があったため」が上がっています。第2位の「結婚・出産・妊娠・育児のため」と僅差で「法人や施設、事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」という理由が第3位でした。これらの結果から、介護事業所においても企業マインドの豊かさを創出し、働き手のメンタル面の環境整備も急がねばならないことがわかります。

どうしたらみんな働きたくなるのか?

今後、介護業界ではどのような職場環境をつくっていくべきなのでしょうか? いくつかのポイントを挙げてみましょう。

  • ICTの積極導入

すでに浸透している「記録のタブレット入力化」や、介護職員の肉体的な負担の軽減を図る「介護ロボット」の導入を進めます。あわせて、「AIを活用した福祉用具や見守り装置」の導入も行い、夜勤時のケアワークの質の向上、労力軽減を図りましょう。さらに「記録データの有効利用」による労働時間の短縮化もめざしてください。

  • ユニットケアの導入

10人程度の利用者と介護職がチームを組み、濃厚かつ風通しのよいコミュニケーションを行い、自由度の高い、ストレスの少ない介護労働環境を構築する手法です。多人数の集団で動くケアワークよりも、職員の個性やアイデアを生かしやすく、のびのびと働くことができるとされています。自由度の高い労働環境であれば、やりがいを持って仕事に取り組めるでしょう。

  • 外国人労働力の導入

アジア各国との経済連携協定(EPA)にもとづき、フィリピン、インドネシア、ベトナムとの人材交流の幅が広がっています。言葉の壁という問題はあるものの、外国人介護士の活用は積極的に検討すべきときが来ています。

人材確保の対策事例や業務改善のチェック方法は?

介護人材を積極的に確保するためには、介護事業者が労働環境に特色をつくり、求職者に活発にアピールする必要があります。例えば、女性の働きやすさの追求に特化する、研修や社内資格を充実させて自己啓発やキャリアパスを実現しやすくするなどです。一方で、介護現場のアンケート結果から、職員が定着しやすい・しにくい介護事業所の特徴を項目化して公表した地方自治体の施策も注目されています。こうした情報を利用して、自事業所の方向性や方策を再検討するのもひとつの手です。

また、厚生労働省の委託事業「介護分野における人材確保のための雇用管理改善推進事業」では、雇用管理ツールとして「介護事業経営改善シート」を公表しているところもあります。

ここでは、厚生労働省の委託事業のひとつ「介護の雇用管理改善CHECK&DO25」を簡単に紹介しましょう。これは介護事業の事業主が対象ですが、介護現場の職員も含めた重層的な活用がすすめられています。

チェックリストは、「労務管理・職場管理」、「情報共有・コミュニケーション」、「人材育成」、「評価・報酬」、「法人・事業所の風土」の5つの領域について25のチェック項目があり、事業所の現状が把握できます。各領域の雇用管理改善の進め方や具体策、留意点も参考になるでしょう。

介護を人気職種にするために

現在、介護職員の処遇を改善するために国から交付金が支給されており、原則10年以上勤務の介護福祉士には処遇改善金が支給され始めています。しかし、これから介護職に就こうとしている若い世代には、まだ給与格差が気になるでしょう。

介護業界を魅力ある職場とするためには、各事業所がICT化を推進し、さまざまな施策を断行して労働環境や労働条件を改善していかなければなりません。同時に、行政、業界が一丸となって、介護職を人気職種として定着させていくための具体的なイメージアップ戦略を、早急に打ち出していくことが大切ではないでしょうか。

 

参考:

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