ACP=アドバンスケアプランニングとは? 介護施設での取り組みに向けて

アドバンスケアプランニング(ACP)とは、人生の最終段階での医療・介護に関し、本人の意思を尊重し意思決定を支援する取り組みです。

ACPには本人の意思を家族や医療・介護関係者などと共有することも含まれ、最期までその人らしく生きるための大切なプロセスです。

介護施設でどのようにACPに取り組むべきかを考察します。

 

 

いま、重要とされるアドバンスケアプランニング(ACP)とは

アドバンスケアプランニング(ACP)とは「人生会議」とも呼ばれ、人生の最終段階にどのような医療やケアを希望するのか、医療・介護を受ける本人の意思決定をサポートする取り組みです。

前もって、本人の考えを家族や信頼する友人、医療や介護関係者など周囲の人たちと話し合いを重ねて共有し、書面にするというプロセスで行われます。

最期までその人らしさを医療や介護に反映させることがACPの目標です。

 

誰でも、いつ、どこで、命を脅かすような重篤な病気やケガを負う可能性があります。

人生の最終段階が迫ったとき、およそ70%の人が治療やケアについて自分で判断したり、要望を伝えたりできない状態に陥るといわれています。

とはいえ、2018年の国による調査結果では、一般人の約60%が人生の最終段階での医療に関心を持ちながら、ほぼ同数の人がそのことについて家族や医療・介護関係者と話し合ったことがないと回答しています。

 

一方で、身近な人の死を体験した人のおよそ半数がその死に対して心残りがあり、そのうち、どうしていたら心残りがなかったかに対する最も多い回答が「前もって亡くした人と人生の最終段階について話していたら」でした。

人生の最終段階を迎えるにあたって、本人の意思を尊重することは、最期まで個人の尊厳を守ることになります。加えて、この調査結果からは、周囲の人たちにとってはグリーフケアにもつながると考えられます。

このように、本人と家族など周囲の人たち双方にとって、ACPは大切なものです。

さらに、本人に代わって家族などが医療・介護関係者に希望を伝えられるようにするためにもACPは大いに役立ちます。

しかし、ACPの取り組みはあくまで個人の意志によって進めていくものなので、考えたくないという人の気持ちも尊重されるべきです。

 

 

アドバンスケアプランニングの進め方とポイント

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ACPを進める手順をご紹介します。

ここでは、自分自身の意思決定としてシミュレーションしてみましょう。

 

1)自分が大切にしたいことを考える

病気などで治療をする場合に、まず自分が大切にしたいことを考えます。

例えば「家族にそばにいてほしい」「仕事や趣味を続けたい」「身内に負担をかけたくない」「苦痛を緩和する治療を受けたい」など、治療に際して自分が希望することを示します。

この意思表明が、将来、家族などがあなたの希望に配慮して判断するための指標として役立ちます。

 

2)信頼できる人を選び、考えた内容を共有する

自分で意思確認が困難になった場合に自分に代わり周囲に意思を伝えてくれる人を選び、考えた内容を共有しましょう。

いつでも自分の思いを尊重してくれる、信頼できる人を選定します。

 

3)かかりつけ医に今後の経過や治療・ケアについて確認する

かかりつけ医に現在の体調や病状、予想される今後の経過、必要な治療・ケアについて確認しておきましょう。健康についての知識を深めることにも役立ちます。

 

4)自分の希望を代理人や医療・ケア関係者と話し合う

治療・ケアへの希望について、代理人や医療・ケア関係者と話し合いましょう。

どのような治療やケアを受けたいか、入院または在宅を希望するのかなど、自分の希望を率直に話し、理解を求めるようにします。

 

5)書面に記録し、周囲と共有する

話し合った内容を書面に記録し、周囲と共有します。

 

ACPは一度行っておけばいいというものではありません。

時間の経過や状況によって本人の意向は変わっていくため、このサイクルをくり返し考え、話し合うことが大切です。

 

 

看取り介護におけるACP実践のポイント

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高齢者人口の増加と長寿化などの社会情勢によって看取り介護を行う介護施設が増えるなか、利用者に寄り添うためにはACPは基本になる大切なものといえます。

では、介護スタッフとして利用者に寄り添い意思決定をサポートするには、どのようなことが大切なのでしょうか?

そのポイントについて説明します。

 

・定期的に話し合いの機会を設ける

病状や時間の経過とともに、利用者や家族の気持ちが変化することがあります。

利用者本人の意向に寄り添うには、本人と家族、介護スタッフ、医療関係者などが定期的に集まり話し合う場を設けることが大切です。

 

・利用者本人と家族の意向に沿えるよう、多職種で連携を図る

「最期は住み慣れた施設で家族とともに過ごしたい」「好物を食べさせてあげたい」などの本人や家族の希望に沿うためには、医師、看護師といった医療関係者や理学療法士、栄養士などの多職種との連携が必要になります。

 

・利用者本人・家族と医療関係者や他のスタッフとの仲介役になる

利用者本人を取り巻く関係者の中でも、介護スタッフは特に本人やその家族に近しい存在になります。

日々のケアを通して得られる本人や家族の情報は他の関係者では得にくいものもありますから、こうした情報を他の職種の関係者と共有し、役立てましょう。

 

・利用者本人の人柄や考え方などを尊重する

利用者本人を個人として尊重し、その人柄や人生観、考え方に関心を持つことも大事です。日常のふれあいの中で本人への理解を深めるようにしましょう。

 

 

最期までその人らしい生き方をサポートするために

ACPは最期までその人らしくあるためにどうすればいいのか、本人の意思を尊重して自己決定をサポートし、その意思を周囲の人たちと共有する取り組みです。

それは、利用者一人ひとりを最期まで個人として尊重し、悔いなく見送ることでもあります。

介護現場で利用者本人と家族に寄り添いACPを実践するには、普段から個人としての利用者やその人生を知ろうとすることが大切です。

 

 

 

 

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