改正介護保険法が成立! 平成30年度(2018年度)、介護保険のどこがどう変わるの?

平成12年(2000年)にスタートした介護保険制度は、これまでに約3年ごとに改正をされてきました。また、年金や医療、介護などの社会保障給付額は、その間に毎年最高を更新し続けてきました。さらに、平成37年(2025年)には、団塊世代と呼ばれる昭和20年代前半生まれの世代が後期高齢の75歳以上となり、これらの給付額がさらに増加することが予想されます。

そこで、平成29年(2017年)5月、改正介護保険法が成立しました。

今回の改正のポイントはズバリ、膨らんでいく社会保障費をどうスリム化するかがテーマです。例えば、これまで2割上限だった一部の利用者の3割負担や新たなサービスシステムのスタートなど、利用者に大きな影響を与える内容ともなっています。

施設や居宅でいつも接している利用者やご家族から、「介護保険のどこがどう変わるの?」とたずねられても、すぐにわかりやすくご説明できるように、今回は平成30年度介護保険法の改正のポイントをまとめてみました。

1~2割から3割に自己負担が増える利用者も!

まず、これまで上限2割だった自己負担割合が、利用者間の公平を保ち、また、介護保険制度を効率的に継続させていくという点から、3割に引き上げられます(ただし月額44,000円の負担上限あり)。介護保険の自己負担は、介護保険制度のスタート時から15年間、原則1割でしたが、前回の改正で一定額以上の所得のある人は2割負担となりました。今回の改正では、2割負担の利用者のうち年金収入等が340万円以上の高所得者の負担割合が3割に上がります。この3割負担の対象になる利用者は約12万人(利用者全体の3%程度)と厚生労働省は試算しています。さらに、毎月の利用者負担の合計が一定の上限を超えた場合に、超過分が還付される「高額介護サービス費」制度の利用者負担上限も上がり、じりじりと自己負担が増える傾向にあります。

認定の期間が延長される

これまで2年に一度(24か月)だった要介護認定有効期間の更新が最大3年(36か月)になり、状態が安定している利用者は二次判定審査が簡素化されます。もちろん、健康状態が急に変化した場合は、いつでも必要に応じて介護認定を受けられる点は今後も変わりませんが、これも行政の実務負担の軽減が目的です。これまで申請から認定までの期間は平均36.5日といわれていましたが、一次判定から二次判定に至る際に要介護度に変更がなかったケースは83.3 %というデータがあり、認定までの期間の短縮にもつながるかもしれません。

福祉用具貸与の価格のばらつきを抑制

従来は、業者によって異なる市場価格で保険給与されていた福祉用具のレンタル料でしたが、国が商品ごとに貸与価格の全国的な状況を把握、当該商品の「全国平均貸与価格」を公示して上限を設定します。現状の福祉用具については、同商品であっても各業者によって価格が異なる実情があり、今改正によって利用者が公正で適正なサービスを受けられるようになることが期待できます。また、商品を選ぶ際、機能や価格が異なるものについても、複数を提示されることにより、選択がしやすくなりそうです。また、貸与価格に上限があることから、悪徳業者から法外な金額の請求を受けることはなくなるでしょう。

障害者福祉と介護のサービスが新たに共生

障害福祉サービスに相当するサービスが介護保険法にある場合は、介護保険サービスの利用が優先されるため、すでに障害福祉サービス事業所を利用していた障害者が高齢者となった際に、馴染みの事業所を利用し続けられないことがありましたが、今回の改正では新たに共生型サービスを位置付け、障害福祉サービス事業所も介護保険事業所の指定を受けることができる特例が設けられました。訪問介護、デイサービス、ショートステイなどで、垣根を越えた利用者優先のサービス体制が実現しそうです。

よりわかりやすい介護保険のために

以上、主な改正点をまとめましたが、ほかにも介護ロボットの開発等加速化事業、利用者が施設や介護事業所を選びやすくするための介護サービス情報の公開制度の仕組みづくりなど、いくつか新しい動きがあるようです。各事業所では直接業務に関わる項目の今後の動向、決定をチェックしておきたいものです。利用者の方々によりやさしい、よりわかりやすい、新しい介護保険を活用できる現場を積極的につくっていきましょう。


参考:

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