ヘルスケア産業の市場規模はどこまで拡大する?

高齢化が急速に進み、社会保障費の拡大が財政を圧迫している日本では、医療費や介護保険給付の削減に向けた取り組みが急務となっています。そのなかで、急成長を遂げているのがヘルスケア産業です。2013年には次世代ヘルスケア産業協議会が発足、国もヘルスケア産業の成長を後押ししています。介護業界にも大きな影響をもたらすであろうヘルスケア産業の現状と今後について詳しく見ていきましょう。

 

ヘルスケア産業は治療中心から予防・健康増進へ

日本は世界一の長寿国だといわれています。内閣府が発表した2018年版の「高齢社会白書」によると、2016年度の男性の平均寿命は80.98歳、女性は87.14歳となっています。世界保健機構(WHO)が発表した2019年版の「世界保健統計」では、世界の平均寿命は72.0歳と示されており、日本の平均寿命は依然として世界のなかでも高いといえます。

ところが、健康的な生活を送ることができる期間を示す健康寿命は、平均寿命と大きな開きがあることがわかっています。実際に、2016年度の健康寿命は男性72.14歳、女性では74.79歳となっており、平均寿命と10歳近い差があります。近年は、この健康寿命を延伸し、平均寿命との差をいかに縮めるかが大きな課題となっているのです。

そこで、国は次世代ヘルスケア産業の創出に向けたコンセプトにおいて、国民の健康寿命を延伸すること、また新産業を創出し、医療費や介護費をあるべきところまで抑えることを明言しています。具体的には、生活習慣病の治療は、重症化する前の予防や早期診断・治療に重点をおくこととなりました。また、地域包括ケアシステムと連携して、介護予防や生活支援などを実施する事業にも取り組む方針を公表しています。

 

テクノロジー化が必須となったヘルスケア産業

ヘルスケア産業では今、テクノロジー化が進んでいます。経済産業省は、ヘルスケア産業の振興を目的として、新たな技術を駆使するヘルスケア関連のベンチャー企業を、大企業や介護施設へと橋渡しをする取り組みを始めました。また、民間企業でもヘルスケアのさまざまな分野で、VRやAR(拡張現実)の技術を活用した取り組みが行われています。なかでも介護分野は、さまざまな角度から利用され話題となっています。ここでは、民間保険で活用されているテクノロジーと、介護分野でのVR活用事例を見ていきましょう。

 

最新テクノロジーを活用した生命保険商品

生命保険会社では、継続して健康増進を図っている契約者に、保険料の一部を返還もしくは減額する商品の販売を進めています。健康度や行動変容を測る方法として活用されているのが、ウェアラブル端末やAIです。

東京海上日動あんしん生命では、ウェアラブル端末を貸与し、スマートフォンと連動させることで歩数を記録、半年ごとに決められた歩数の達成度を評価し、保険料の一部を返還しています。

住友生命では、保険加入者の健康増進への取り組みをポイント化し、ポイントに応じたステータスの達成度によって保険料の割引などが受けられるサービスを実施しています。取り組みへの評価にはウェアラブル端末やスマートフォンのアプリを活用、商品専用のアプリと連動させる仕組みです。

日本生命では、米アマゾン・ドット・コムのAIスピーカーを活用し、クイズや生活習慣に関するアドバイスを行うことで、日常的に脳へ刺激を与えたり、生活の改善を図る取り組みを行っています。

 

介護分野でのVR活用例

介護分野でのVR活用事例で話題となっているのが、シルバーウッド社の認知症疑似体験です。認知症患者の実体験や有識者の知見をもとにしたVR映像は、長年現場で認知症介護に携わってきた介護士ですら知りえなかった当事者の気持ちが、自分のこととして初めて理解できると高評価を得ています。

介護領域のVR活用例はまだあります。VRを使った医療機器を開発しているベンチャー企業mediVRと、大阪大学、国立循環器病研究センターでは、体幹コントロールのリハビリテーションにVRを活用しています。これまで理学療法士の判断にゆだねられていた、患者の可動域の限界値や体幹バランスを数値化するための研究が進んでいるのです。患者の状態を定量化することができれば、一定の水準のリハビリテーションを提供できることもあり、今後の成果に期待が高まっています。

 

介護施設の経営難突破のカギはヘルスケア産業への参入か

介護施設では、近年、有料老人ホームの倒産が目立っています。高齢者の入居施設では、サービス付き高齢者向け住宅が年々増加しており、同業者間で競争が激化しているのです。その結果、経営基盤のぜい弱な施設を中心に、入居者の確保が難しくなってきているのが現状です。

実際に、業績不振や事業の失敗により経営に行きづまり倒産するケースが多く、介護事業のみでは施設運営が難しい時期にきているといえます。介護施設が生き残るためには、今後、介護保険収入以外の収入源の確保が重要となるでしょう。

すでに介護保険外のサービスを組み合わせた混合介護を行う施設も出てきています。社会福祉法人伸こう福祉会では、東レ建設と協力し仕事付き高齢者向け住宅のモデル事業を行っています。また、VR認知症体験を行っているシルバーウッドも、サービス付き高齢者向け住宅を複数運営しています。今後も、ヘルスケア産業に算入する介護施設は増えることが予想され、その市場規模はますます拡大することでしょう。

 

ヘルスケア産業の市場規模は介護分野で拡大する可能性も

ヘルスケア産業は現在、医療業界だけでなく異業種からの参入がめざましい状況となっています。また、介護報酬だけでは収益が上がらない状態である今、ヘルスケア産業参入を考える介護事業者も増えることが予想されます。ヘルスケア産業の市場規模拡大から、ますます目が離せない状況にあるといえるでしょう。

 

参考:

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