介護保険施設におけるICT導入の効果と補助金の必要性

医療のICT化が加速するにつれ、介護現場でもICT導入の波が来ています。東京都は2019年度に、ICT環境を整える必要性を感じている介護保険施設に対し、ICT導入補助金を交付しました。

今回は、東京都における介護保険施設を対象としたICT導入補助金制度について、内容と効果を詳しく解説します。

ICT導入のための補助金「介護保険施設等におけるICT活用促進事業」とは

介護保険施設のように大規模な施設では、ICT導入の必要性を感じても、かかる費用が大きいことから導入が難しい状況でした。そこで東京都では、2019年度より「介護保険施設等におけるICT活用促進事業」をスタートし、施設のICT導入を支援しています。

「介護保険施設等におけるICT活用促進事業」の概要

「介護保険施設等におけるICT活用促進事業」とは、介護老人保険施設、老人短期入所施設などの入居施設でICT環境を整えるための費用を申請できる補助金制度です。2019年度に東京都が独自の新規事業として始め、2020年度も引き続き実施される見込みです。
当事業で受けられる補助金は、最大で1,000万円です。これにより、大規模な入所施設でも施設全体でICT環境を整えることが可能となりました。

ICT環境の整備によって業務が効率化されると、介護職の負担が軽減され、質の高い介護サービスを提供することにつながります。また、在宅サービスや病院などの関連機関との情報共有も円滑に行うことが可能となります。地域連携が強化され、地域全体で高齢者を支援する地域包括ケアシステムが進められるというメリットもあるのです。

ICT活用促進事業で受けられる補助金の内容とは

「介護保険施設等におけるICT活用促進事業」では、東京都で開設している以下の3施設を対象としています。なお、施設管理を含む公立の施設は対象外です。

  • 定員30名以上の特別養護老人ホームおよび併設される老人短期入所施設
  • 介護老人保健施設
  • 認知症高齢者グループホーム

補助金基準額の内訳は基本単価と加算単価があります。基本単価は、特別養護老人ホームと介護老人保健施設では1施設当たり1,000万円まで、認知症高齢者グループホームでは1施設当たり250万円まで。1法人当たりでは、特別養護老人ホームと介護老人保健施設では2,000万円まで、認知症高齢者グループホームでは1,000万円までです。加算単価は、特別養護老人ホームと介護老人保健施設では1法人当たり150万円、認知症高齢者グループホームでは1法人当たり50万円までと決められています。

また、ICT導入の内容についても制限があります。補助対象となる経費は、基本単価として「利用者処遇業務の効率化に資するICT機器の導入」、「導入前後のコンサルティング」、加算単価として「組織管理業務や併設サービスへのICT機器の導入等」があります。加算単価のみの補助申請も認められていません。

 

ICT導入の実態と補助金を活用した介護保険施設の事例

東京都は新規事業に先立ち、2018年に都内の福祉職場を対象にICT導入の実態調査を行いました。また、2019年度に補助金を活用した施設における事例も公表しています。東京都におけるICT導入の実態と、補助金を活用した施設の事例について詳しく見ていきましょう。

東京都でのICT導入の実態とは

実際に導入が進んでいるICT機器を見てみると、パソコンはほぼすべての施設で導入済みであることがわかります。その一方で、タブレットやスマートフォンについては、必要性を感じている事業所は多いものの、実際に導入している事業所は3割弱となっています。

パソコンに次いで多く導入されている機器が見守りセンサーです。見守りセンサーの導入率は特別養護老人ホームや介護老人保健施設で6~7割、グループホームで5割弱となっています。自立度の高い利用者が多いケアハウスや有料老人ホームでも5~6割ほど導入しており、介護事業所では必要不可欠なICT機器といえるでしょう。見守りセンサーと似た役割を持つ監視カメラについても、5割前後の施設が導入済みとなっています。

では、ICT機器を円滑に使用するための無線LAN環境についてはどうでしょうか。すでに無線LAN環境を整えている介護事業所は5~7割となっています。導入していない事業所でも必要性を感じているところは多いことから、施設における無線LAN環境は今後、さらに整えられていくでしょう。

補助金を活用した介護保険施設で導入されたICT機器とその効果

2019年度に「介護保険施設等におけるICT活用促進事業」を利用した事業所は107施設でした。このうち、ある特別養護老人ホームでは、無線LANの全館整備やインカム、タブレットなどの導入が実施されています。介護報酬ソフトや介護ケアソフトを法人全体で導入した事例も見られました。
実際にICT環境を整えたことにより、残業削減や労働生産性の向上などの効果が出ており、インカム導入で職員間のコミュニケーションが活性化されたという結果も見られています。また、業務を改善したことにより介護記録の量や内容の充実を図ることができ、介護サービスの質の向上にもつながっています。

 

介護保険施設のICT導入には補助金が不可欠

介護保険施設がICTを導入することにより得られる効果は、業務改善や職員の負担軽減だけではありません。業務が効率化されたことによりできた時間で、利用者や家族により充実した介護サービスを提供することができるようになります。しかし、介護保険施設でのICT導入は費用もかかるため、補助金の存在が不可欠です。この機会に東京都の補助金を活用してICT化を進めましょう。

参考:

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